第5話 クリスマスに寄せて

 今日は嬉しいことがあったので彼女に寄せて。

 僕が初めて恋人とクリスマスを過ごしたのは二十一の冬、今の妻ちゃんと。それまで僕はずっとある女性に叶わぬ片想いしていて、半ばアル中みたいな生活をしていた。

 金もないのにジャズバーやパブに入り浸っていて、そこで酩酊する頭で聴いていた曲が何となく耳に残っている。

 何というのか知らないが三拍子の曲だったり裏拍子の曲だったり。ジャズバーにいたのでおそらくジャズだが音楽は詳しくないので分からない。

 ただ、酒場の温かい雰囲気に飲まれながら聴く曲はよかった。間接照明の光をぼんやり覚えている。夕焼けみたいだった。

 夕焼けと言えばナナシマイさんだ。今夜は彼女に捧げる。『君と旅をするために』。水晶みたいにクリアで美しい話。でも色は赤。燃えるような。

 僕はナナシマイさんのYouTubeをフォローしてるので彼女の作った曲をよく聴くのだが、彼女の声もクリスタルボイス、というのだろうか。透き通っていて美しい。でも時々燃えるように情熱的で、どこかやっぱり『君と旅をするために』を思い出す。彼女の作品で言うと『かき集めた青』なんかも興味があるが、この作品は何となく熱い香りがしている。

 この香り、なのだが、彼女は自前の写真を小説のイメージ画像にしていて、『かき集めた青』の画像は空に向かって真っ直ぐに生えるひまわり(間違ってたらごめんなさい)なのだ。情熱を感じる。

 そんな彼女に今夜は特別な曲をプレゼントしてもらった。僕が詩を書いた曲だ。いい曲でずっと聴いている。

 芸術で人を温かくできるのは才能だ。宝石のような美しさだ。僕がこれまで関わってきた作家さんはみんなこの宝石があった。僕はこの宝石を、かつての師匠に否定されたので、もしかしたら僕にはないが、僕の目に映ったものには自信が持てる。彼女もみんなも、美しい。


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