第3話 哲学に寄せて

 日本は哲学の土壌が貧困らしい。

 まぁ、あまり考えるということをしなさそうな民族だというのは分かる。どちらかと言うと日本人は快楽的で、楽しいことは好きだけど真面目なことは誰かがやればいいくらいのスタンスだと(僕は)感じている。なので一部の突出した人たちしか真面目に学問をしない。僕の外国人の友達は洋の東西を問わず政治や学問に熱心だが日本ではそういう話は嫌われる。この手の話は争いの種になるので、快楽的な日本人は避けるのだ。

 それでもまぁ、というかそれだからこそ、哲学を上手いこと快楽に取り入れるとそれは新鮮かつ面白く見える。六畳のえるさんという作家がそれをしている。

 哲学を魔法に落とし込む。ある意味小難しく感じるものを身近なものに例えるということをやっている。作家の創意工夫たるや。留まるところを知らない。

 そもそも全ての学問の根底には哲学がある。哲学こそ学問の始祖だ。だがまぁ、現代では「哲学なんて何の役に立つの?」と揶揄われる。役に立たなきゃいけないものにしか価値がないと考えるのは少々浅はかだと思う。そもそも小説なんてものが無駄の極みだし。

 ま、とにかく。

 我々作家は無駄を楽しもう。人間が人間たり得るのは無駄があるからだ。他の生き物が生きるのに全力で無駄を嫌うのに対し人間は生きることに余裕があるから余分を楽しむことができる。これこそ人間らしいことである。

 そういう訳で。

 六畳のえるさんの作品から哲学に流れる人がいたら嬉しい限りである。



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