307話 クエスト消化

 その後、狂太郎たちがゼット・シティ周辺で解決したクエストを、この場に記しておく。

 その大半は、この物語の本筋とは大きく関わりがないが、――一つ、二つほど、”終末因子”と関わるような事件もなくはなかった。



クエスト名『六つのナポレオン』

依頼内容:”ナポレオン”を名乗る、六体の強力なニンゲン属性のモンスターが暴れている。全て撃退して欲しい。

結果:ナポレオンを自称するモンスターの正体は、自身を人型に彫刻し直したガーゴイルたちであった。ガーゴイルたちは皆、ヴィーラのレベル上げの材料となったという。

報酬:黒真珠(売却額:1900ゴールド)


クエスト名『バスカヴィル家の犬』

依頼内容:地元の名士であるバスカヴィル家へ訪問。モンスター討伐の依頼。

 なんでも、近所の村に恐るべき魔犬が出現し、夜な夜な人を丸ごと喰らうらしい。

結果:話を聞いた後、十数分ほどで撃退。

 犯人は、幻術を覚えたネコマタの赤ん坊であった。産まれたばかりのネコマタは、外敵から身を守っていただけにすぎなかったのである。死んだ人々は、幻影に惑わされて自ら底なし沼に沈んでしまったようだ。

 ネコマタの赤ん坊は、バスカヴィル家の人々がこっそり育てることにしたという。

報酬:900ゴールド


クエスト名『スズメバチの巣』

依頼内容:余命数ヶ月を宣告された依頼人が、家を相続する妻のため、庭のスズメバチ退治をしてほしい。

結果:かなり簡単な依頼だと思われたが、――”スズメバチ”は、想定外に凶悪な”カガク”系のモンスターであった。

 ワトスンの《ビーム》の腕前に救われたものの、全てのスズメバチを駆除する頃には、レベルが3つも上がっていた。

報酬:1000ゴールド


クエスト名『蒼い紅玉』

依頼内容:”カーバンクル”という名の希少モンスターがこの辺りに出没している。

 カーバンクルは、蒼い宝石を額にのせた不思議な動物で、その姿の美しさから、かつて乱獲されたこともあるらしい。

 依頼主は”カーバンクル”を安全に保護したいようだ。

結果:カーバンクルの捕獲には少し手間がかかった。いかに狂太郎が素早く動こうと、何の手がかりもない一匹のモンスターを探すのは難しい。

 今回の仕事は、メイドロボ・よし子がずいぶんと役に立ってくれた。

 どうも彼女、根っからの探索者のようで、彼女のスキル、《目星》《聞き耳》《ナビゲート》は、極めて探索に役に立ったらしい。

報酬:1200ゴールド


クエスト名『申し分のないメイド』

依頼内容:ロボット型のモンスターをメイドのように扱う、奇特なサモナーがいるという。彼はもうちょっと肉感的なメイドロボをご所望のようだ。

結果:メイドロボ・よし子を一晩だけ貸し出したところ、たいそう気に入ってもらえた。

 人間離れした外見に、むしろ魅力を感じたらしい。

報酬:50ゴールド


クエスト名『ブルースパーティントン設計書』

依頼内容:とある技師からの依頼。かつて契約していたモンスターを捕縛してほしいらしい。契約していたモンスターの名前は、”カガク”属性のブルースパーティントン。凶悪な”センスイカン”族モンスターだそうだ。

結果:海辺にてワトスンに探索させたところ、ほどなくして目標を発見。

 しかしこのブルースパーティントン、話を聞いていたほど凶悪なモンスターではない。彼女からよくよく話を聞いたところ、今回のクエスト依頼者は大変な性的倒錯者で、ずっと自動調節スロットの二重弁あたりを模写したスケベ絵(※18)のモデルをさせられていたという。

 ブルースパーティントンに同情した狂太郎たちは、彼女の”設計図”を盗みだし、目の前で破り捨ててやった。

報酬:海底に沈んでいたお宝(売却額:500ゴールド)、ブルースパーティントンの笑顔(プライスレス)。


クエスト名『本陣殺人事件』

依頼内容:とある大御所サモナーの本邸に”三本指のモンスター”が現れ、無差別殺人を行ったという。危険なモンスターの討伐をお願いしたい。

結果:”三本指のモンスター”の存在は、依頼人の虚言であった。

 事件の真相は、契約したモンスターに裏切られ、それを苦にしたサモナーが自殺を図っただけだった。それでは外聞が悪いということで、ありもしない”三本指のモンスター”の存在をほのめかした、ということだ。

報酬:10000ゴールド(口止め料)


クエスト名『銀星号事件』

依頼内容:ワイ・シティで出馬予定のユニコーン、銀星号が何者かに盗まれてしまった。なんとか数日中に取り返して欲しい。

結果:ユニコーンは盗まれたのではなく、自ら逃げ出しただけだった。

 途中、泥に浸かって体毛の色を変え、自慢の角を折ってまで身を隠していたようだ。

 のちにヴィーラが話を聞き出したところ、『処女のいない仕事先でこれ以上働きたくなかった』とのこと(※19)。同情した狂太郎たちは、彼を人里遠くへ逃がしてやったという。

報酬:折れたユニコーンの角(売却額:1000ゴールド)


クエスト名『犬神家の一族』

依頼内容:”イヌガミ”と呼ばれるモンスターの助力によって有名になったサモナー、サヘエが依頼主。最近、有名になりつつあるサモナーの狂太郎に、三人娘の相手をしてもらいたいらしい。

結果:一応、勝負の結果は全勝。三人とも、ヴィーラ、ワトスンの敵ではなかった。

 三人の少女はこれを機会に、困難には姉妹一丸となって当たらなければいけないことを学んだらしい。

報酬:1000ゴールド


クエスト名『赤毛連盟』

依頼内容:毛並みの紅いモンスターばかり集めている、奇妙なサモナーの同好会が存在する。彼ら、「いままでで観たこともない赤毛のモンスターの写真」が欲しいという。

結果:沙羅にメールして、自撮りを何枚か送ってもらった。

 同好会の面々はいたく感激して、名誉会員として狂太郎を受け入れてくれたという。

報酬:100ゴールド、”赤毛連盟”会員証(いらない)


クエスト名『迷子のロボット』

依頼内容:とあるサモナーの契約モンスターが迷子になった。彼を探して欲しい。なお、ロボットの名前はネスター。

結果:ネスターは迷子になったのではなく、とある集団の思想に感化され、その一員になってしまったらしい。その思想というのは、”モンスター三原則”と呼ばれるもの。モンスターは『第一に自己防衛、第二に命令服従、第三に契約者の命を護るべき』だという最近の考え方である。

 ネスターを見つけたときには、もうすでに彼は人間の友人ではなくなっていた。

 狂太郎たちには、ネスターを破壊する他の選択肢はなかったという。

報酬:500ゴールド


クエスト名『日曜の朝早く』

依頼内容:巷で”チュウチュウネズミ”という名前の麻薬が横行している。日曜の朝早く、これの中毒者がとある女性を刺し殺したらしい。犯人は逮捕済だが、依頼主はゼット・シティにおける密売人の根絶を望んでいる。

結果:”チュウチュウネズミ”の売人は、意外なほど簡単に見つけられた。売人はモンスターだったのだ。なるほど、様々な魔法を使いこなすモンスターが犯人なら、各シティのチーフサモナーが犯人を逮捕できなかった訳もわかる。

 狂太郎は売人であったモンスターを撃退し、事件の概要を報告した。

報酬:1000ゴールド、ゼット・シティのチーフからの感謝状(いらない)



 もう、十分。

 狂太郎がそう判断できるほど、ヴィーラとワトスンが強化されたのは、ゼット・シティに到着してから二十日ほど過ぎた頃合いだろうか。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


(※18)

 何を言っているかわからないかもしれないが、筆者自身、何が起きているかよくわかっていない。


(※19)

 ユニコーンは、処女の臭いを好むらしい。

 ちょっとキモいな、と筆者は思いました。


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