171話 第一回 飢夫くんの異世界コラム(後編)
【6F】
・二人、靴だけ履いたほぼ素っ裸の状態で、ダンジョンを徘徊。
もうこうなってくると、服は着ているだけ邪魔だ。
こんな格好で歩き回ってると……さすがに変態ちっくな気分になってくる。
お腹が冷えそうになってきたので、念のため冷気耐性がつく魔法を使用。ふんわり温かい。
歩いているうちにバーバラちゃんも元気を取り戻していて、なんとか進めそうだ。
・なーんて思ってたら、「そう甘くないぞ」ってかんじのトラップが。以前も見かけた、水球型の生き物の超巨大版みたいなやつに襲われて、あっという間に全身余すところなく■■■■マッサージを受ける。
案外、ここまであちこち責められても、まだ残ってるもんだねー。敏感な場所って。そこだけで10回は■■■■。
【7F】
・この辺まで来ると、もうほとんどすれ違う冒険者もいなくなる。静かなのは良いことだけれど、ちょっぴり寂しい。お祭りの中、間違って人気のないところに紛れ込んじゃった不安感っていうのかな。
・ちなみにいま、わたしとバーバラちゃんの■■■■にはイソギンチャクみたいな謎の生命体が張り付いていて、ずーっと■■■■してくる。でも、すっかり刺激に慣れちゃって、なんとも感じないの。笑っちゃうよねー。
・《まりょく》を常に行使しているため、……体力は無尽蔵に、ある。でも、精神力の方はそうじゃない。
ここに、世界一美味しいお菓子があったとして、……その一つ目は、最高に楽しんでそれを食べることが出来るでしょ? 二度目、三度目もきっとそうだ。……だけど、同じ刺激が四度、五度と続くうち、徐々に感覚は摩耗していく。同じ刺激が百度も続けば、その人にとってそれはやがて、”世界一”でもなんでもないものに変わってしまうだろう。
ちょうど、その時わたしたちを襲っていた感情は、それだと思う。
セックスも、■■■■も、■■■■も――……だんだん嫌気がさしてきつつあったんだ。
わたしは正直、その時絶望しかけていたよ。性の遊びに関しては、誰にも負けないくらい楽しんできたクチだから。
だけどその時、人の心が思いつく全ての欲望を超えた先、――その終着点を見た気がして。
【8F】
・少し進むと、これまでこのダンジョンに挑んでは道半ばで倒れていった数々の冒険者たちの痴態が記録された映像がならぶ回廊を、延々と歩かされることに。
もちろん映像は、完璧な無修正だ。
・回廊を進むうち、だんだん賢者にでもなったような気分で、哲学的な考えが頭をもたげてくる。
エロってなんなんだろう?
スケベってどういうことなんだろう?
……狂太郎と違ってわたしは、あんまり深くものごとを考えるタイプじゃない。
ただ単に、――個人の快楽を追求する先に、人間の生きる目的がある、……そんな風に、人生を捉えてる。
”救世主”として誰かを救うのも、配信者としてリスナーと楽しみを共有するのも、仲間との時間を大切にするのも……結局は全て、わたし個人の”快楽”の追求のためだ。
・わたしは普段、配信者として活動するとき、いつも視聴者の問いかけに、一言、二言で結論づけられる、明快な言葉で答えるようにしている。
「個人の幸福を追求せよ」っていう、シンプルな答えを。
・だけど思うんだ。
結局、人生の楽しみ方は、いろいろと深くて難しくって。
時には間を空けたり、欲しいものを誰かに譲ったりして……、そうすることで、本当の悦びが得られるんじゃないか、ってさ。
・エロトラップダンジョンは、わたしに大切なことを教えてくれた。人生を見つめ直す機会を与えてくれたんだ。
ありがとう、エロトラップダンジョン。
だいすきだ、エロトラップダンジョン。
・などと益体もないことを考えているうちに、回廊を抜けた。
結局この階では、直接的に肉体を刺激されることはなかったように思う。休憩ポイント、ということだろうか。
でもお陰で、心の奥の奥の方で……なんだかモヤモヤしたものを抱え込むことになったけれど。
【9F】
・この階層での課題は、ただ一つだけ。部屋の中央に、ぽつんと
・ただし、わたしにとってこれは、かなり難しい課題だった。
正直わたし、ひとり■■■■が好きじゃないんだよね。
だってその、……――自分で自分のに触れるなんて、なんだか汚らしいじゃないか。それに、気力をほとんど失っている状態でそういう真似をするのは、なかなか辛いものがある。
案の定、この部屋では一時間ほどぼんやりする羽目になって、……その間のバーバラちゃんとの沈黙が、わりと辛かった。そもそも彼女、あんまりおしゃべりが好きなタイプじゃないし。
・何とも言えない気まずい雰囲気のまま、最後の階層へ。
どうもここを作った”救世主”さん、単なる悪ふざけが目的じゃない気がする。エロトラップダンジョンを通じて、人生の在り方を教えてくれてるんじゃないかしら。……わたしの考えすぎかなあ?
【10F】
・ついにこの大冒険も、終わりを迎えようとしている。
・最後の階層だけあって、これまで通ってきたトラップのメドレーが我々に襲いかかった。肉壁に次ぐ肉壁、触手に次ぐ触手、セックスしないと出られない部屋に次ぐセックスしないと出られない部屋……。たぶん、この階層だけで、100回。――あるいはもっとかも知れない。流石のわたしも、一日に■■■■した回数としては人生初めてだ。治癒魔法がなければたぶん、死んでいたと思う。世界を救うための力をこんなことに使うというのは、ちょっぴり気が引けるけれども。
・もちろん、ここにきて新しいトラップも数多登場したよ。
全身を、うねうねする触手で編み込まれた服を着させられたり、
拷問具みたいな椅子に縛り付けられて身体中刺激されたり、
複数の淫魔に言葉責めを受けたり、
無重力空間で、宇宙時代に向けた新しい体位の開発を迫られたり、
巨人の口に含まれて、あめ玉みたいにぺろぺろされたり、
幽霊の手に身体の内部を刺激されたり、
初恋の人に化けた夢魔の子が、いかにもワルっぽい中年男性に■■■■されてるところをただ観ているシチュエーション、とか。
・それでも、わたしたちは諦めなかった。くじけなかったんだ。「あともうちょっと頑張れば、きっと報われる」そう信じてね。
・そして、最後の試練。
これが正真正銘、最も恐ろしい試練だった。
その内容は、――わたしにとっての”家族”とでも言うべき親しい人たちとの、ドスケベ■■■■。
・この場を借りて罪の告白させてもらおう。
この試練、……わたしにとっては、もっとも容易いものだった。
ここまでくるともう、何の感慨もなく抱けたね。
狂太郎役の夢魔の子とか、ヒイヒイ言わせてやったよ。
▼
ちなみに、ダンジョン最深部にあるのは、空っぽの宝箱がひとつあるっきりだった。
どうも、前回のダンジョン攻略者が奪ったきりになってるみたい。
あの中に何が入っていたか……は、次にあの少女と会った時の楽しみに取っておこうと思う。
▼
……と。
こうしてわたしは、”ああああ”ちゃんに次ぐエロトラップダンジョンの攻略者になったわけ。
帰還と同時に、ヨシワラでは大いに騒ぎになった。
まさか一週間の間に四人目のダンジョン攻略者がでるとはーっ……てね。
近々センソー寺に、わたしたちを称えるための銅像が建つ予定だってさ。
▼
ってわけで、わたしの異世界コラム(第一回)は終了。
いやあ。次にヨシワラに行ったときが楽しみだ。
できれば、シェアハウスのみんなとも来れたらいいな。
ローシュさんも、「またおいで」って言ってくれたし。
機会があったら、またいつかね~♪
WORLD0148 『情慾の迷宮』
(了)
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