98話 神の子【検索結果】

 神の子

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 出典:基本的に無料の百科事典『うぃきうぃき(Wikiwiki)』より


『注意!

 この記事には、複数の問題があります。

 WIKI編集者は、改善のための議論にご協力下さい。


・この存命人物の記事には、検証可能な出典が不足しています。

・この記事の正確性に疑問が呈されています。

・この記事には独自研究が含まれているおそれがあります。』


『WIKIはニュース速報ではありません。

 うぃきうぃきでは、突発的な出来事の報告はするべきではありません。

 もしあなたが本記事を更新する場合、数年後であっても文意が変わらないような記述を心がけて下さい。』


 神の子は、歴史的にいくつかの人物によって、その神性を暗示するために主張された称号である。

 そのため、あらゆる宗教的文脈により使用されている。

 キリスト教(イエス・キリスト)、ヘブライ語聖書(天使の別名)。2001年に放送されたテレビ番組、ヤング・ノーブルのアルバム、2014年に制作されたアメリカ映画、空飛ぶスパゲッティ・モンスター教徒が中核を担うテロ組織に関しては別リンクをご参照下さい。


 本記事では、2032年にその存在が確認された、「選ばれし者」あるいは「神の子」と呼ばれるものについて、主に取り扱う。


 ”神の子”は、2032年に『中央ロンドン人工孵化プラント』にて作成された”ニンゲン族”女性の別名である。


●概要

 ”神の子”は、世界で唯一その能力が確認された現実改変能力者であり、現在、”ああああ”と呼ばれる呼称で×××島に居住している。


●経歴

 ”ああああ”は、2032年に行われた、第○○○回目の人口受精により偶発的に生まれたと思われる。

 プラントを卒業後、五年間は平凡な”ニンゲン族”として×××島で暮らしていたが、ある日、とある観光客が島の生態系の異常性に気付いたことから、彼女の特殊能力が発覚。奇妙なことに、島民はみな、彼女の驚くべき能力に関して、全く気付かなかったという。

 ”ああああ”の現実改変能力は極めて高く(詳細は下記)、その能力の出所は現在、明らかになっていない。

 一説によると彼女はこの世界の”主人公”役であり、この世界の創世は彼女という存在を生み出すためであったという〔要出典〕。


●彼女が起こした、あるいは現在も起こし続けている”奇跡”について

・”ああああ”は、この世から争いごとをなくす力を持つ〔要出典〕。

・”ああああ”という異常な名称に、島民は疑問を持たなくなる。

・”ああああ”は、食事を摂る必要がない。時に食べ物を口にすることがあるが、それすら本来は必要がない。

・”ああああ”は排泄を行わない。汗・垢のようなものもほとんど出ず、風呂に入らなくても髪や身体は常に清潔である。

・”ああああ”の住む島では、植えた苗木が数日で大樹となり、毎日のように果実がなる。

・”ああああ”に薬を渡されたものは、それがどのような難病であっても即座に完治する。

・”ああああ”の住む×××島には、一日に一度、必ず貴重な古生代~新生代の化石を発掘することが出来る。

・”ああああ”が花に水やりを行うと、未知の品種の花が咲く(青い薔薇、金のコスモスなど)。

・”ああああ”は、一日一度、岩を硬いもので叩くことにより668万円相当の金貨を取得する。これは世界政府管理下における、平均世帯収入と同額である。

・”ああああ”は、望むままに島の地形を編集することができる。

・”ああああ”が大きな目標を達成したとき、謎の文字列が島上空に出現した。これはこの世界をデザインした、いわば神のような存在のリストであると推測されている〔要出典〕。

・”ああああ”の住む島の建物は、見た目より広い場合が多い。これは内部と外部で、時空のずれが生じているためである。

・”ああああ”は、人を惹きつけてやまない特別な力がある。一説には、「三度も話しかけられば」彼女を家族のように感じる、とも。

・”ああああ”に嫌われた住民は、しばらく期間を置いた後に自然と入れ替わる。

・”ああああ”は、どのような喧嘩であっても即座に仲裁する力を持つ。

・”ああああ”の描いたデザインは、強烈に人を魅了する力がある。


 結論から言うと我々は、この世界を以下のように解釈することができる。

 この世界は恐らく、、と。

 現状、この解釈を覆すような証拠は出ていない。


●×××島

 なお、”ああああ”の住む×××島は現在、聖地としてその出入りを制限されているが、”ああああ”の持つ力の特性上、自然と外部のものが入り込んでしまうことがある。だが、その件について島民たちは一切疑問を持つことがない。


 現在、×××島に住むための手段は、


・島の管理団体に多額の寄付を行い、居住権を獲得する。

・”ああああ”の力により、島へと召喚される。


 この二種類のみである。


●”ああああ”への対応

 なお”ああああ”は、自身の異常性についてほとんど自覚していない。

 そうなった場合、世界がどのような変貌を遂げるかわからないためである。

 そのため、彼女の取り扱いには管理団体の指揮のもと、厳重な注意を行っている。

 現在、彼女の行動(IPアドレスを含む)は常に監視され、不都合な情報は常に遮断されている。







『神の子ニュース速報』 

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●”ああああ”うつ病問題     2050年5月6日更新

 2049年ごろから”ああああ”と島民の関係性に問題が生じている。

 ”ああああ”はこれまで通りのノルマ(島の生活向上のための作業)をこなしてはいるものの、島民たちとほとんどコミュニケーションをとろうとしないのである。


 決定的な問題は、今のところ表面化してはいない。

 ただ、日頃から彼女を観察している専門家によると、昨今の”ああああ”の行動には、軽度のうつ病傾向が見られるという。

 ”ああああ”の家に取り付けた盗聴器によると、


【一日あたりの嘆息回数】

 2049年以前:10~20回

 それ以後:50~100回


 という驚くべきデータも判明している。

 これに比例し、マスターベーションの回数も減少傾向にあるという。

 性欲の減退。これもまた、不健康な生活を行っていることの証左だ。


 また、”ああああ”のインターネット検索履歴のトップワードは、


一位 ミステリー小説 おすすめ

二位 レティクル座 神

三位 世界 秘密

四位 シャーロック・ホームズ 実在

五位 アガサ・クリスティ 作品

六位 ミステリー漫画 おすすめ

七位 さかな 美味しい 種類

八位 叙述トリック

九位 江戸川乱歩 ミステリー類型

十位 えっち 初めて やり方


 とのこと。

 これに関して専門家は、


「まず、彼女がこの世界の在り方に関して疑問を抱いていること。それそのものが危険な傾向だ。彼女が自分の能力を完全に自覚したとき、人類社会がいったいどうなってしまうか、我々には想像もつかないのだから」

「この世界が、彼女を”主人公”とする空間なのであれば、あるいはこの傾向は、世界の終わりを示すものかもしれません」

「彼女が生まれてから、この世界からあらゆる戦争が取り除かれたことを考えると、これは何らかの手を打たなければならない」

「結局のところ我々人類が生き残るためには、彼女になんらかのエンターテイメントを提供するほか、ないのかもしれない。

 仮にその結果として、少数の人命が損なわれるとしても」


 なにゆえかくのごとき事態に陥ったか。

 日和見主義の世界政府はただ、沈黙したままである。――無理もない。誰もが迂闊な行動で、世界を終わらせるトリガーを引きたくないのだ。


 もはや、我々が願うのはただ、×××島民たちがこの状況を打破してくれることを待つのみである。



●天岩戸作戦     2050年10月2日更新

 本日、本サイトが秘密裏に入手した情報により、”ああああ”のうつ病問題に関して、ひとまず進展が見られた。

 島民たちが皆、「触らぬ神に祟りなし」となっていた世界政府に業を煮やした形。

 正確な発表は後日となりそうだが、いずれにせよ、停滞した現状に一石を投ずることになるのは間違いなさそうだ。


 ”天岩戸作戦”と名付けられたこのプロジェクトは、今のところ謎に包まれている……が、その名前は、極東の島国、――かつて”日本”と呼ばれていた場所の言い伝えを元にしていると思われる。

 その話を要約すると、


『あるところに、太陽を司る女神がいた。

 女神は原因不明の何かでヘソを曲げた。

 だからみんなで楽しいことをして、女神を誘い出した』


 というもの。

 いずれにせよ、伝承通りの力業ではないようだが……はたして。


 続報が待たれる。

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