第8話
8話
続く第三試合は、長髪で、顔は整っているが、どこか暗い雰囲気が特徴的な
「…試合、始め!!」
冷香の試合の開始の合図が出たが、両者、一歩も動かなかった。桜はあちこちを見渡して何か探している様子だったが、雨里は何もせず、何か呟いていた。
「んー…いないねぇ……あ!いた!」
最初に動いたのは桜だった。向かっていったのは空を飛んでいた一羽のカラスだった。カラスのところに着くと何やらカラスに向かって話しかけているようだった。
「ちょっと力を貸して!」
カラスに話しかけ始めてからちょうど一分が経ったころ、
「やった!ありがとう!」
と言って桜が喜びながら戻ってきた。するとその後にカラスもついてきていた。
「私の能力はね、
カラスの鳴き声と共に桜が走り出した。すると雨里も動き出して、
「二対一…ね。じゃあ私も。」
そう言って雨里が
「召喚、
と言うと、雨里の背後に黒い渦がでてきて、そこから髪が背中まであり、手の指の爪が軽く見積もっても50cmはありそうな位の長い爪があり、目が充血して真っ赤になっている化け物が現れた。
「これで二対ニね。」
「えー!何それずるーい!」
すると桜は最初にずるいこと?をしたのは自分なのにフェアに持ってこようとした雨里をずるい呼ばわりしていた。
「…いくよ、崇徳院。」
「GYAAAAAAAA!」
崇徳院と呼ばれた怪物が雄叫びを上げて桜に近づいていった。
「崇徳院はね、今より遥か昔に生まれた最強の怨霊なの。私の能力はね、
そう言っている間にも崇徳院はどんどん桜に近づいていって、桜との距離が二メートル程になったとき、雨里が
「
と、唱えると、崇徳院は
「GYAAAA!!」
と雄叫びを上げて腕を上に振りかざし、そのまま一気に振り下ろした。
「わっとと、、、あっぶなー!」
かろうじて避けた桜だったが、桜の立っていた位置には5本の爪の跡が校庭の土を抉っていた。恐らく桜が避けていなければ桜は5本にスライスされていただろう。
「ちょっと、本気でやらないとダメみたいだね。だったらわたしも本気出しちゃうぞー!しゃんちゃん!いくよ!」
「…しゃんちゃん?」
驚いて無常が聞き返すと
「うん、しゃんちゃん!本名はしゃいにんぐふるぶらっくばーどなんだけど長いからしゃんちゃん!」
しゃいにんぐふるぶらっくばーど、なんとも厨二くさいような名前である。
「しゃんちゃんいくよ!せーの!
そう掛け声をすると、カラスの体が光り始め、桜の周りを旋回し始めた。だんだん光が収まってくるとそこには背中に翼を生やし、手と足に鍵爪がある姿の桜が現れた。
「この使役にはね、憑依って言う技があって、使役した動物の力を使うことができるんだよ!」
そして桜は空中に飛んで十分距離を取ると、
「えい!」
と言って崇徳院に向かって急降下していき、崇徳院の腹を思いっきり蹴り飛ばした。桜に蹴られた崇徳院は
「GYAAAAA!?」
と叫びながら三メートルほど後ろに飛んでいった。
「崇徳院!?大丈夫?」
雨里が崇徳院に駆け寄りながらそう聞くと
「GYAA…」
まるで雨里に大丈夫だと言うように鳴くと、雨里は安心した表情になって
「大丈夫そうね、よかった。じゃあ私たちも少し本気を出しましょうか。崇徳院、力を10%解放よ。」
そう囁くと崇徳院はゆっくりと起き上がったあと、
「GYAAAAAAAAAAA!!!」
と叫んだ。そして桜の方を向くと少し前かがみになって倒れこんだ…と思ったら一瞬で先らの目の前に移動してそのままあの長い爪で桜に切りかかった。
「きゃあ!」
と叫びながら十メートルは後ろに吹き飛んでいく桜に追い討ちをかけるようにして崇徳院は桜の後ろに回り込んで足で桜に背中を蹴った。
「いやぁぁぁ!!」
さらに崇徳院が追い討ちをかけようとしたところ
「崇徳院、もう大丈夫!攻撃をやめて!」
「GYA?」
雨里が崇徳院に声をかけた。が崇徳院は少し耳を傾けただけで雨里の言うことを聞こうとはしなかった。
「GYAGYAAAAAAA!!」
崇徳院がそのまま桜を攻撃しようとしたので雨里が
「召喚解除!崇徳院!」
と半ば悲鳴のような声で唱えると、
「GYAAAAAAAAAAAaaa」
と叫びながら崇徳院は雨里の背後にある黒い渦に吸い込まれていった。
「桜さん、大丈夫!?」
雨里が駆け寄ると桜は
「うぅ…」
とうめいていた。
「そこまで!勝者、雨里さん。雨里さんは桜さんを保健室に連れて行って頂戴。他の人は静かにして、次の対戦に移るわよ。」
桜の試合を見ていた無常は目を見開いていた。
……崇徳院?崇徳院って遥か昔に生まれたとされるあの怨霊のことか?さっきの夜白という人といい、あんなのを使役できる人がなんでD組にいるんだ?ってそうじゃないだろ!桜は?桜は大丈夫だったのか?あの攻撃を喰らったらきっとひとたまりもないはずだ、本当に大丈夫なのか?
そう考えると無常はいてもたってもいられなくなり雨里の後を追って走っていった。
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