第2話

 体育館で待つこと5分。体育館の壁には中学校や駅などでよく見た学校PRポスターが貼られていた。


 そのポスターには、笑顔で「ここは安心安全な学校で、みんな生き生きと生活しています!」と語る青年の姿が描かれていた。


 壁に貼られたポスターを見ながら待っていると、突然透き通った水のような綺麗な声が体育館を一喝した。


 「静粛に!これより入学式を始める!礼!初めに、理事長の話。」

すると、和服を着た30代くらいの男が壇上にゆっくりと現れた。その男はニコニコしているのにどこか危ない雰囲気を醸し出していた。


 「やぁみんな。こんにちは。私がここの理事長を勤めるウーラノスです。よろしくね。ここオストハウシュタット都立魔術学園は、国内の魔術学園でも最大級の魔術学園で、全校生徒を合わせると、なんと10000人以上の生徒が在籍しているんだ。どうだい?すごいだろ。次に君たちに話しておきたいことは、ここでは、。ということだ。」


 ニコニコとウーラノスがその言葉を発した瞬間、体育館内がにわかにざわついた。

さらに、次に理事長が発した言葉で場内は緊迫した空気に包まれた。


 「魔術に危険は付き物だからね。魔術の危険性はみんな勉強してきているかもしれないが、君たちが勉強してきたのは魔術の表面にも満たないところだ。魔術学園は天国の入り口とも言われているね。それは、入り口の話だ。奥へ進んでいくとさらに危険が伴ってくる、魔術によって体を食べられた者、魔術で召喚した獣に地獄へと引き込まれた者、精神異常に駆られて学園の屋上から飛び降りた者……魔術を学ぶと言うことは、常に崖っぷちに足の指先だけで立つと言うことだ。」


 生徒達は今まで魔術について勉強してきて、魔術の危険性は分かっているつもりだったが、今の発言で改めて魔術に危険性を知ることとなった。


 「……と言っても、ここ6年間は死亡者ゼロだから安心してもらって構わないよ。」


 そう。ここ数年間は死亡者ゼロ。一見とても安心できる発言だが、6年前までは死亡者がいたと言うことを表していた。


 「さて、話が長くなってしまったが、まあ、その、なんだ。私が言いたいのは、」


 そこで一旦言葉をきり深呼吸してから、


 「ここでの7年間を楽しんでくれ。ここでの7年間はきっと君たちにとって将来必ず役に立つものがある。それを探すのは君たちだ。好きにやってくれ。」


 そう言って一礼してから、静かに壇を降りていった。


「次に、生徒会長の話。」


 そう司会が告げると、1人の青年が現れた。


 「えー...みなさんこんにちは、私、ここの生徒会長を務めます、片桐かたぎり聖也せいやと言います。以後、お見知り置きを。さて、敬語っていうのはめんどくさいですね。タメでもいいですかね、まあ許可が出なくてもするけど。改めてようこそ、オストハウシュタット都立魔術学園へ。ここでは、さっき理事長が言ってくれたように、自分の身は自分で守る、これがとても大事になるので心に刻んでおいてほしいところだ。そして次に、これもまたさっき理事長が言っていた通り、ここ6年間は死者が出ていない。なぜなら、俺がいるからだ。俺の固有スキルは「絶対実行ぜったいじっこう。俺が思ったこと、口に出したことは必ず現実になる。無茶なものも現実になる。その分魔力消費は大きいけどな。例えば...。」


 そう言葉を切ると、


「うわ、なんだこれ!」

「どうなってんの?」

「やだ、ちょっと下ろして!」

などの言葉が片桐の上から聞こえてきた。


「.....こんなふうに、お前らを宙に浮かせることもできる。」


そういうと、浮いていた生徒たちはゆっくりと元に位置に戻っていった。


「これは今、俺が『元の位置に戻れ』と心の中で思ったからだ。このように俺の思ったこと、口に出したことは必ず現実になる。それを踏まえた上で俺はここに宣言する。」


「お前らは、これから7年間、どんなことがあっても死なない!これは宣言だ。同時に、絶対だ。これでお前らは7年間は死なないから安心していいぞ。」


そう言葉を残して、生徒会長、片桐聖也は立ち去った。






「これで入学式を終わる!礼!新入生は事前に知らされた教室で一時待機するように。」

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