おっさんだった俺が美少女になって高校生からやり直してみたら人生クッソチョロかった~あの時イジめてきた奴がお近づきになりたいらしいけど気持ち悪いから消えなさい~
011.女子高生(おっさん)のBADEND3『ひとかけら』
011.女子高生(おっさん)のBADEND3『ひとかけら』
【その途切れそうな透明な瞳に】
未だ整理しきれていない現実を他所に、俺は高らかに声を響かせる。
この歌が最後──曲が終われば世界は終焉を迎える。
そんな確信めいた不安が歌っている最中も頭の片隅から離れない。
だけど考えてる余裕もないし……正直どうすれば良いのか正解も見つからない。
おっさんにマルチタスクを求める時点で間違っている、1ターンに一回行動しかできない生き物なんだから。
【歩み始めた君が笑いかけてくれた】
考え事をしていても歌の方は問題ない。
何千回と聴いてきたアオクの曲だし、リハーサル何回もしたし、ヒナ達アマチュア組をアオクの皆がしっかり支えてくれて演奏は安定してる。
あとは曲が終わるまでに世界を救う方法を見つけなければならない、そうしなければ全てが終わる。
【時を奏でて溢れ出したその想いは】
鬼難易度を越えた神難易度──ぶっちゃけ無理ゲーだし、美少女になったとはいえただの中年に一体何をさせてんだって話だし、百合コメディに怒涛のシリアス展開ぶっ込んでくんなって感じだ。
【何処までもミライへ続いてるのかな】
頭サビを終え、Aメロへ。
演奏時間は5分21秒──残り5分。
そういえばidoさんに歌詞制作を頼まれた時、迷いも不安もなかった。
今までもそんな事がちょいちょいあった──
もしかして……おっさんのこのタイムリープ、二周目だったりするのだろうか?
そうであれば色々と説明がつく──おっさんだった人生と、今のアシュナ時代の間に
だけど、思い出そうとしてもなにも思い出せない。
ふとした時に一瞬だけ記憶が蘇えることがあるけどそれだけだ。
もしもそれが『鍵』になるんだとしたら……するべき事は明白なのに──どうしても思い出せないもどかしさと苛立ちが積もっていく。
おっさんだった時のいらん記憶ならいくらでも出てくるのに。
【人の影の歪んだ憎しみが 大地を覆う】
曲は一番のサビを終え、再びAメロへ。
残りは──3分。
ウルト◯マンはこんな心境だったのか、とどうでも良い考えが思考を阻む。
くそっ……時間がない。
なにかきっかけかヒントはないのか……と観客の方にぼやけていた視点を合わせると、視界上の片隅……体育館の天井付近に
比喩でも何でもなく──世界の終わりを表す異常な光景。気づいているのは館内全体を俯瞰(ふかん)しているおっさんだけ。
【もう何も見たくないよ こんな世界なんてもう何も………】
曲は二番を終え、間奏へ。
残り1分50秒。
まじでヤバい。
空中に出来た『世界終焉(ブラックホール)』は徐々にひび割れを増し、光明ならぬ【暗黒】を覗かせ……今にも世界を覆わんと蠢(うごめ)いている。
(あ、終わった──)
【……それでも想う】
「「「「アシュナ(殿)(ちゃん)ーーっっ!」」」」
【何度も心に降る 雨があがった】
瞬間────目前に光が広がった。
こちらも単なる比喩ではない。
観客達の持つサイリウム。
サイリウムが列ごとに彩りを変化させ、眩(まばゆ)い光を拡げてくれたのだ。
最右列──なんか知らん【赤髪イケメン】(確か若手ナンバーワン俳優)と【七海八天】【オータムモットーP】【きなこちゃん】を先頭に赤色。
右側二列目──【皇めらぎ】【龍宮寺乙姫】【桃色桜花】先生方を筆頭に橙色。
中央右列──同志の【ケン達】【鳳凰天馬】とクラスメイト達の【来栖亜璃修】【村木マサオ】【陽キャ男子達】の集まる黄色。
中央列──家族みんなと【風神飾花】【漆夜黒空】達を先頭に緑色。
中央左列──クラスメイト【三九美咲】【早苗エナ】【鏑木煌花】他校の【小泉いずみ】【吉良綺羅星】たち華々しい水色。
左側二列目──出版社のみんな【鴻野夜光】【一二三四】【初音熱波】【吉瀬ヶ崎輝汐】の青色。
最左列──色々なところで出逢った皆【神ノ宮神美】【巽三陀】【女島真剣滅】【星乃ミシェル】
【青井蒼】を先頭に紫色。
七列が異彩の光を放ち、ステージから出口に向かってまるで違う世界へと通じているようなレインボーロードを創り上げてくれた。
それは紛(まご)う事無き【虹】だった。
【夢に見た景色の先にあったのは──】
【虹】の光は館内全体に広がり……闇を押し退け、そして…………歌詞にリンクするように──奇跡を起こした。
──『──おじさんっ!!! 聞こえますかっ!!?』
耳鳴りの奥から声がする。
幽霊でも、神様でも、幻聴でもない。
ああ、聞こえてる。
ありがとう、みんな。
ありがとう、異世界から助けてくれた俺。
ありがとう、神様。
ありがとう、阿修凪ちゃん。
【とびっきりの みんなの笑顔】
みんなの呼び声と、創ってくれた道と……その先にいた残された欠片である彼女の声をきっかけに、全ての記憶を取り戻した俺は精一杯カッコつけてはにかんで笑った。
「────ただいま」
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