004.女子高生(おっさん)と女子達
「………んー」
「どうしたの~? アシュナちゃん、なんか悩み~?」
「アシュナ。あたしで良ければ聞くよ?」
「いや……そんな大袈裟なものじゃないんだけど……」
とある──というか俺の持ち別荘の一室ではあられもない姿をした女子高生達が百合の時間を繰り広げていた。
高校生の分際で海が見える別荘を購入したおっさんのプライベート空間──そこでは毎週末、お気に入りの女子高生を呼んで薔薇色(百合だけど)な展開を心ゆくまで堪能するという戦国時代の覇王もびっくりな至福の宴が開催されている。
まぁ、今はただ単に文化祭のバンド演奏の練習をする強化合宿の名目で集まっているのだけれど……えっちな展開を望んでいたおっさんの思惑通りにあれよあれよとお風呂で流しっこからの~ベッドインと相成ったわけである。
朝比奈陽奈、樋廻(ひまわり)陽葵(ひまり)、姫廻(ひめぐり)陽女(ひめ)の三名は裸でおっさんとベッドに寝そべりながら他愛もない話に花を咲かせていた。
時刻は夕暮れ刻を回り、ガラス越しに一望できる房総の海は徐々に星灯りを水面に映していく……波が光を揺らし広がる様は闇に包まれた空間に希望を翳(かざ)すよかのように視界に煌めきを届けてくれる。
「最近よく夢を見るんだ。それがリアル過ぎるっていうか……夢なのか現実なのかわからなくなって……」
「あ、それって明晰夢ってやつ?」
「まぁ……そうかも。違う世界の自分になっててさ、男だったり女だったりおっさんだったり……貧乏だったりするんだけどどれも確かに自分でさ……」
「へぇー、違う世界の自分って面白いね」
「私達はどんなアシュナでも好きだよねー?」
「えへへ~、もちろんだよ~」
「もう、今はアシュナの夢の話でしょ。それで?」
「その夢の中でさ、どうしても思い出せない世界があって………一番大切──っていうか、一番思い入れのある世界のはずなのに靄(もや)がかって阻害されてるみたいにどうしてもはっきりしないんだ。まぁ、夢なんてそんなもんかもしれないけど……」
「あーわかるわかる。大切ないい夢ほど忘れちゃうんだよねー」
「わたしも~、ケーキいっぱい食べてる夢の時はすぐ目が覚めちゃうんだよね~」
「もぅ、ヒナ、ヒマリ。ちゃんと聞く気ある? アシュナは悩んでるんだよ?」
「いや、そんなマジなやつじゃないから大丈夫だよヒメ」
「だってアシュナはあたしの悩みを聞いてくれたじゃん。今度はあたしがっ…………あれ? あはは……これも夢の中の話だった。ごめんごめん……」
「もー、なにそれヒメー………でも私もアシュナの夢をよく見るよー。修学旅行とかまだずっと先なのにもう行っちゃったしねー」
「わたしもわたしも~。夢でいつも王子様みたいに助けてくれるんだ~」
三人の話を聞いていると……ピキッ──っと、一瞬なにかがヒビ割れたような音がしたような気がした。
「……………」
「ど……どうしたのアシュナ? なんか難しい顔してるけど……」
「ごめんっ……わたし変な事言った? 嫌いにならないで……」
「……ぅうん。ごめんっ、なんでもないっ。さ、文化祭に向けて練習しよっか」
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