#002.女子高生(おっさん)のいる家族


「あ、おはようアシュナ。ご飯出来てるわよ」

「おはよう」

「お姉ちゃんおはよー」

「「おはようございますっ! 阿修凪お嬢様っ!」」


 朝、制服に着替えてリビングに降りる。

モダンな感じの『THE金持ち』といった広々とした空間──何を隠そう、我が家は小説家で高校生な私が使い道の無い印税収入を使って建てた屋敷なのだ。


 広すぎて多過ぎる部屋と、気紛れな母さんの相性が抜群に悪いので我が家ではメイドさんや侍女さん、料理人さんやボディーガードを雇っている。


(まぁそれはさておき父さん母さんマナ、やっぱみんな若いな。まぁ20年前なんだから当然………あれ?)


 俺の名は【波澄あしゅら】改め【波澄あしゅな】。

 タイムリープ×美少女化を果たして、今日この時点から20年後の未来からやってきたはずの【おっさん超絶美少女】だ。

 原因もなにもわからないが、とにかく俺は美少女化して人生をやり直していたのだが……物心ついた時から俺の心には違和感が渦巻いていた。

 

「お姉ちゃん今日も学校行くの?」

「うん、今日は仕事ないし……もうすぐ文化祭だからね」

「アオアクアのイドさん直伝の歌声を披露するんだものね。チケットはプレミアで末端価格でも億になってるらしいわよ」

「私も見に行くからね、お姉ちゃん」


 かつて男だった時には考えられない会話が繰り広げられる。父さんや母さんはともかく、妹には距離を置かれていたため高校時代に会話をした事はなかったのに……女になってからは幼い頃から仲良し姉妹だ。


「お姉ちゃんのおかげで私も有名人だからな~、へへ……みて。フォロワー53万人だよ。お姉ちゃんもいい加減こーゆーのやりなってば」

「いや……実は初めたんだよね……」

「……ええー!? なんで教えてくれないの!?」

「……なんかフォロワーが1億二千万とかいって恐くなって………」

「日本人口!?」

「ほらほら二人とも、早く食べて学校行きなさい」


 朝食を終え、支度をしてマナと一緒に学校へ行く。

 妹がいるというのは何かと便利だ、女の子の生活を送る上でなにかと相談できるし。

 

「お嬢、妹君。行きましょう」

「あっ、【コクウ】さん。今日も送迎お願いしまーす。コクウさんも王子様みたいって話題になってフォロワー一気に100万人いったんですよね」

「ええ………ですが、俺はこういった類(たぐい)が苦手なのでなにをしたら良いのか……」

「何も投稿してないんですか?」

「高級ブランドの和牛や空港ロビーやタピオカの写真などをアップしています」

「それおじさんがするやつ!! タピオカなんてもう絶滅してるよ!? お姉ちゃんは?」

「写真は投稿してないよ。フォロワーの可愛い女の子達に張り付いて逐一いいねとコメントを……」

「粘着くそリプおじさん!? 二人とも十代なのに使い方おかしいよ!?」


 その後、色々教えてくれた妹にイイねした。

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