#001.女子高生(おっさん)の転生(リスタート)


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「お姉ちゃーん、ご飯だよー」


 ある日、俺の人生は巻き戻った。

 何を言っているかわからないかもしれないが、俺だってよくわからん。ある日突然【赤ん坊】まで巻き戻ったんだ。

 しかも……何やら世界がおかしい。

 いや、おかしいのは自分なのかもしれない。

 

「あー……うん」


 いつも通り、寝惚けを装って気怠い返事をしながらこの場所が夢か現実かを確認する。

 よく寝た朝の、薄暗い明け方から朝陽が射し込むまでのゆっくり起きる時間のなんたる清々しい事か──うん、間違いなく現実だ。


(俺は確かにおっさんだった)


 けど、周りの皆はそれを気にしていない様子だ。

 家族も、高校時代につるんでた陰の者たちも、学校のカースト上位の陽キャたちも。

 しかも、何か対応がおかしい……おかしすぎる。


 無口でオタク、ゲームや漫画が大好きである程度成績優秀……だけど人と目を合わせて喋るのが苦手で、好きなものの話題じゃないと興味が無い。

 確かこの頃は絶賛中二病を患っていた事もあって周囲全てを敵視していた……はずだ。

 そして、自分だけの物語を創るのが大好きで小説をいつも書いていた──それでイジメられていた……はず。DQN集団に。


(しかし、何か仕返しした気がしなくもない。そんなはず、ないんだけど)


 そして、勉強も就職も何もかも上手くいかず……フリーターやニートを繰り返し、気がつけばつまらないサラリーマンになって30後半になってしまった。

 当然独身、今でも小説家への夢を諦めきれずに毎日書いているけど箸にも棒にもかからなかった。


「そんな生活を送ってる最中……人生が巻き戻った。けど、なにか……忘れてるような気がする……」

「阿修凪お嬢様、お食事の御用意ができたようですが……」


 考えすぎていたのか……いつまでも降りて来ないのを心配した侍女の【風神飾花】ちゃんが扉越しに声をかけてきた。


「なんでもない。今いくよ」


 とにかく今や『クールで物憂げなオタク系超絶※※*』となって持て囃され……人生になんの障害もなく、道のりに何の苦難もなく、過去になんの決別もなく、将来に何の陰りもなく、未来になんの障壁もない。

待たなくても果報あり、乗り越える艱難辛苦(かんなんしんく)無し、笑わなくても福来たるな第二の人生。


 今度こそ俺、いや、私はvery easyな人生を送ってやる──もう送ってるんだけど……ね。



──【西暦2022年 09/15

『娚人』波澄阿修凪 16歳 】──

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