第3話 女子高生(おっさん)のいるクラス


 クラスの戸を開く。

 すると、クラス中から一斉に声がかかる。


「アシュナさん、おはようー」

「アシュナー、昨日の『水ダウ』観たー?」

「ア……アシュナさんっ! この問題なんだけど……」

「よぉ、今日も可愛いなアシュナ。いい加減付き合えよー」


 陽キャ、陰キャ、カーストを問わず挨拶される。

 男だった時は教室に入ってきた事すら気づかれなかったのに美少女になったとたんにこれだ。


 俺は【波澄(はずみ)あしゅな】、中身はおっさんの超絶美少女。

 現在高校一年の夏休み明けーー9月半ば。

 時期的には大体クラスでの立ち位置が決まり始めるころ……つまり、カースト制度が適用される頃だ。


 これまでの俺ーー【あしゅな】がどう過ごしてきたか知らないが何故かクラスの中心人物……つまりはカースト最上位に位置するくらいになってるらしい。

 美少女になっても根暗な性格が変わる事はないーーそう思っていたのだが……【美少女】というのはどんなハンデもプラスにできる力を持っているようだ。


 男のボッチーー窓辺で物憂げにたたずむ美少女。

 机で寝てるーーマイペースで不思議な美少女。

 根暗陰キャーー誰にも迎合しない凛とした美少女。

 

 そんな風に勝手に変換されるのだから美少女万歳としか言い様がない。

 それでいて、その孤高な立ち振る舞いに皆が気を使って優しくしてくれて受け入れてくれるのだから素晴らしい人生だ。

 

 授業中、なんか腹が痛いなと思ったら生理だった。

 一月前に一度済ませている、その時はこの世の終わりかと思うほどの激痛で死ぬところだったけど今回は軽めらしい。

 俺は挙手して発言する。


「あ、すいません。生理来たんでトイレ行ってきます」

「「「!!」」」

「そ……そう、行ってきなさい」

 

 クラスの奴らも先生も唖然としている。

 おっさんになった今、気恥ずかしさとかエチケットとかモラルとかディスタンスとかそういった概念が薄くなっていた故の大胆発言だった。

 後日ーー先生から連絡を受けた両親に小言を言われて叱られた。

 

 

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