会社員

車窓に流れる夜景を見ていると、昼間の人生は偽りで、もしかすると私は生まれてからずっと電車の中でこの風景を眼球に映していたのではないかという感覚にとらわれる。

入り込めない街を少し上から見下ろす気分は別にいいものでもなかった。

赤いネオンは不穏だとは誰も決めてないのに、ほろびる、と咄嗟に思う。

ほろほろと溶けるようにほろびるまち、まほろばの地。

ほろほろ舌を動かしていたら、ふと腎臓に眠る土色の石を天使か誰かにやる約束をしていたことを思い出した。思い出しただけ。

娘はどんな体勢で眠っているのだろうか。

毎瞬変わるその姿に永遠を感じるというと、同僚に笑われたことがある。永遠は言い過ぎたかもしれない。かといって言い換え表現がみつからない。

ほろびる街と永遠の娘。滅びる娘とえーえんの街。どっちかというと前者がいいな、愛ってそういうものでしょう。


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