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西城洋は、制服警官の隙をついて病院から逃走した。だが、幸子の居所はつかめない。探しあぐねた末に、豊平川の河川敷に止めた車で仮眠を取ろうとしていた。
〝みんなどこへ消えた……美樹はどこへ……〟
寒さは厳しく、車の窓は水滴で曇っている。ヒーターも満足に効かない。眠るべきだと分かっている。緊張の連続で疲れた頭は、満足に働かない。眠れないことも分かっている。
高橋美樹の居所を突き止めるには、近田親子、そして三枝を見つけなければならない。それなにの、全員の行方がつかめない。焦りが高まるばかりだった。
〝美樹にもしものことがあったら、どうしたらいいんだ……〟
これまでにも困難はあった。そのたびに、機知と忍耐で抜け道を見出してきた。その洋の頭脳も、今度ばかりは弱音をあげている。
〝くそ……美樹を失うのか……〟
その時、ダッシュボードの上に置いてあったiPhoneが鳴った。すでに明け方が近い。そんな時間に電話をかけてくる知り合いはいない。洋は、見知らぬ番号を表示するiPhoneを無表情に見つめるばかりだった。
が、その瞬間、閃くものがあった。
〝もしかしたら!〟
出たのは、忘れられない声だった。
『西城君だね』
直感は当たった。近田大介だ。
「そうです」
『銭函の近くまでまでどれぐらいで来られる?』
洋は、大介の意図を悟った。
「三〇分あれば。誰かいるんですね?」
『幸子だ。守ってやってほしい。警察に捕まらずに、だ』
大介は、モーテルの住所と部屋番号を告げた。
「僕に何をしろと?」
『君が幸子を守り抜けば、美樹さんを無事に渡そう。モーテルの主人には「追って部下が来て、被害者の女性を保護する」と話を通す。刑事のふりをしていれば、部屋まで通れる』
「美樹の居所を知っているんですね⁉」
『知っている』
「どこですか⁉」
『モーテルに行かなければ分からない。そこに必ず幸子を連れて来てくれ。君が私の期待に応えれば、すべては円満に解決する。できるか?』
洋は返事をためらわなかった。
「やります」
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