7

 意識を閉ざして、どれだけの時間が過ぎたのだろうか――。

 不意に幸子の脳に大介の声がしみ込んだ。

 かすかだが、聞き違えることがない声。

「……三枝を殴った……骨が折れた……」

 震えながら、毛布から顔を出す。自分は、病室にいる。中には誰もいない。ドアが開いている。その先に、大介が立っている。

 声は、現実に、今、語られている。

 大介が、浩一を殴ったのだ。殴った手の骨が折れるほどに……。

 現実に。

 幸子は、本当に気を失った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る