第13話
空気が鳴って、横笛はヤイチの頬を掠めていった。仰向けに体勢が変わったタイチ起き上がろうとするも、ヤイチの両手が首を覆い締め付ける。
再び床に頭部をぶつけたタイチを見下ろすヤイチは両手に力を込める。息が詰まり、白くなる手と比例して顔も赤くなっていることだろう。ヤイチの手を引っぺがそうと抵抗していた指から次第に力が抜け、添えられているだけになったことに口元が緩む。その苦痛に歪んだ、あるいは生気が消えかけた顔をヤイチが見 ――― ることはなかった。
笑っている。
首を絞められながらもタイチは口の両端を釣り上げ、笑っていた。蔑むような、哀れむような、優越感に満ちたような笑みであった。
は、と目を見開いたヤイチはとっさにタイチの首を絞め直した。
「なんだよ・・・何だよお前!」
柔らかな首の皮膚に爪が食い込む。
「おれの邪魔ばっかしてさぁ! なんで、なんでワタルが誘拐されないんだよ!? なんでサワが車に轢かれないんだよ!? なんでナナが強姦されないんだよ!?!? いつもいつも3人が生きてて! おかしいだっお゛、ごっ!!」
唾を飛ばし、掴んだ首を上下に振るヤイチの口に棒状のものが突っ込まれる。喉奥の柔らかな粘膜に横笛が突き刺さり、ヤイチは思わず手を離した。
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