第14話
嘔吐くヤイチが尻餅をついた時、ドアが開いた。夏の熱気と共に入ってきたのは母と妹ではなさそうであった。足音が明らかに二人以上聞こえる。
「No.081、時間切れです」
タイチは首が解放された時点で目を閉じてしまった。もう体を起こして状況を確認し見届けるほどの体力も気力もなく、耳を傾け音を拾うことくらいしかできなかった。
「は!? クソッ離せ!」
ヤイチが悪態をつきながら暴れるも、抵抗むなしく拘束される様子が聞こえる。全て声や足音などから推測しているので、想像でしかないが。
「お前がいるからおれが【タイチ】になれねぇんだよ! お前のせいで! おまえ、何なんだよォ!!!!」
真っ黒なスーツに身を包んだ数人に玄関から引きずり出されたヤイチは、ドアが閉まっていく中、タイチがゆっくりと顎を動かすのを見た。
「ばーか」
真っ直ぐに伸ばした腕の先にはピースサイン。金属が噛み合う音を立ててドアが閉まった。
こうして、【僕】は【おれ】になりました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます