第10話
結局、サッカーボールは近くの児童館に寄付することになったとサワから聞いた。
今日は日差しの他に風も強かった。飛んでくる砂に目が開けられなくなったり、口の中がじゃりついたりして水飲み場から離れ難くなっていた。五人で鬼ごっこをしていたが、タイチは目に砂が入ったタイミングで何かにつまずいて転んでしまった。近くにいたヤイチが手を貸してくれて、一時的に戦線を離脱する。
「大丈夫~?」
ベンチに座って砂を払っていると、ナナがやってきた。水分補給に来たようで、ベンチに置いてあった水筒を口に運ぶ。
「んー・・・なんとか・・・」
「目こすっちゃダメだよ~」
生理的ににじみ出てくる涙を手の甲で拭き取り、タイチが木陰から飛び出すとナナの姿が見えなかった。ブランコを囲う柵に腰掛けているサワにナナの所在を聞く。ワタルとヤイチは水飲み場で遊んでいた。
「トイレ行くって」
「あー・・・そっか。これ拾ったんだけど」
タイチの手にはパステルカラーのハンカチ。それを見たサワは何かピンときたらしく、タイチからハンカチを受け取って「届けてくるね!」と公衆トイレに向かった。
数秒後、水飲み場から勢いよく発射された水流がタイチを襲い、ずぶ濡れの男子が三人できあがった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます