第11話

 それからまた数日後、四人は公民館にいた。祭囃子の練習である。タイチは横笛に口を当てて安定しない音に苦戦していた。

 リコーダーが苦手なので横笛も吹けるはずないのだが、じゃんけんに負けていちばん人手が必要な横笛部隊に回されてしまった。笛は父からのおさがりだ。親子二代にわたって横笛を担当するとは、さすが親子だな〜などと誰かが言っていた。


 公民館は冷房のない古い建物なので数台の扇風機だけが頼りとなる。今のところは立っているだけで文字通り汗が吹き出る有り様だ。毎年、扇風機が頼りになった試しがないが、無いよりマシだからと大人たちは扇風機の風力を最大にしては角度の微調整を行なう。

 午後から始まった練習は休憩を挟みつつ夕暮れ時には終わった。横笛の音は結局、安定しなかった。


 さっさと帰って家で練習しようとタイチは帰り支度を済ませ、扇風機の前で涼を取っているワタルたちに「またね」と声をかける。

「笛、代わろうか?」

「いいよ。太鼓上手くなったってワタル褒められてたじゃん」

「てかワタルって笛吹けんの?」

とサワから聞かれ、

「やったことない! 俺は太鼓一筋だから!」

「いいよ、いいよ。家でも練習するし」

得意げに答えるワタルに苦笑しつつタイチは公民館を後にした。

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