第7話

 学校から持ち帰った鉢植えを枯らしてしまったことを女子たちに知られると、また非難を浴びるとワタルは思っているのだろう。宿題にも植物の成長過程を写真に撮って云々、というものがあったのを思い出す。

 タイチも真面目に世話をしているとは言えないが、枯らしてはいない。

「うちに来たらさ、妹と遊んでくれない?」

「・・・おっけ」

 真夏日、蝉時雨が降り注ぐ中で密やかに行われた交渉は見事成立した。ちなみにこの会話は他の三人にも聞こえていたので、後日サワたちから「検索した写真を加工して使えば良かったんじゃない?」と指摘されていたし、やっぱりちょっと軽蔑されていた。


「じゃあねー」

 手を振り合って、それぞれが帰路につく。

 公園を出ると近くに大きな白い車が止まっていた。ナナの家にあった八人くらい乗れる車に似ていたが、色が違う。住宅街の広くない道路を圧迫している真昼の路上駐車を少し不審に思いながら、タイチはワタルを連れて足早に通り過ぎた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る