第6話

 新たな出会いから数日後の朝、いつものように誰よりも早く起きた妹が離れなくて、泣きわめいて、ラジオ体操が始まる時間はとっくに過ぎていた。それでもみんながまだ遊んでいることを願って、タイチは公園に走る。

 あわよくばナナのお母さんが作ったおやつを食べれたら、なんて。


 そういえばワタルが呼びに来なかったな、と家を出る時に思った。彼は忙しい母親に代わって料理以外の家事を分担していると前に言っていた。今日は何か事情があったのだろう。

 公園の入口でタイチは立ち止まる。いつも通り大きな木の下、ワタルとサワとナナ、それからヤイチが歓談中であった。

 この時、先日のナナのように軽く謝罪しながら輪に混ざれば良かったとタイチは思った。そう思う前にワタルが大声で名前を呼ぶもんだから、少し恥ずかしいやら気まずいやら。ひとつまみのぎこちなさを片手に握り締め、もう片方の手を上げて、

「おう」

と返事をした。

 今日はナナのお母さんが作ったおやつは無いようだった。


 タイチも木陰の中に入ると、ワタルが口に手を添えて近づいてくる。暑いのであまりくっつかないでほしいのだが、彼が声を潜めることなんて滅多にないのでタイチも耳を寄せる。

「あのさ、タイチん家ってまだ鉢植え生きてる?」

「…学校から持ち帰ったやつ?」

「それ」

 普段、校庭に置いてある鉢植えは1人1個と割り当てられているので夏休み前に持ち帰ったのはワタルも同じであるはずだが。

「……枯らしちゃって、さ。写真撮らせてほしいんだけど…………」

「…いいよ」

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