第3話
夏休み中の朝はのんびりしても許される。いっそ昼に起きても良いものだが、タイチにそんな余裕はない。幼稚園児の妹が誰よりも早く起き、タイチや両親を起こそうと顔をこね回してくるせいでタイチは朝五時には完全に脳が覚醒してしまった。脚に絡みつく妹の手を剥がしながらパジャマから着替えた。
そうして、妹の相手をしながら家族揃って朝ご飯を食べ、仕事に向かう父を見送る。学校がある日と大差ない朝が過ぎ去ろうとしていた時、インターホンが鳴った。応答する前に元気な声が響き渡る。
「タイチー! 早く! ラジオ体操!」
画面いっぱいに映るのはワタルの口。前歯が抜けた間抜けな口の中がタイチの名前を連呼していた。
「今行く。ちょっと待って!」
母と妹に「行ってきます」と声を掛け、ワタルと一緒に公園まで走って行く。走って三分もかからない距離にある公園にはお年寄りから妹と同じくらいの子どもまで集まっており、その中にサワもいた。
「ナナは?」
「やっぱ来れないってー」
ナナの両親は心配性らしく、特に父親はナナが一人で出歩くことに厳しい。こんな近場の公園にラジオ体操しに来ることすらダメだ、と言う。母親の方は比較的、緩いので父親が仕事に行っている間なら遊びに行けるのだと、そんなことを話していたのもこの公園だった。
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