第4話 家族を育てる
数日は何事もなく過ごした。
香が落ち着いたのかと聞かれると、そうではない。
香は相変わらず良く泣く。
でも、私の心は凪いでいて大声で香を怒鳴ることはない。
ただ、旦那に対して、怒りが湧き上がる。
旦那は怖くて、反撃なんて出来ない。
子どものために結婚してたようなもので私のことは愛してくれていない、、たぶん。
朝目覚めて右隣を見ると旦那さんが寝ている。
左隣に香が寝ている。
夜、授乳のために泣き出すから、香の位置は私の隣。
添い乳するから、恥ずかしいから旦那さんに丸見えになる香を挟んだ川の字は断固拒否した。
今日は旦那さんのお休みの日。
今日の予定は香と一緒に親子で動物園だ。
まだ、準備できていないから、みんなより少し早く起きた。
とりあえず、自分の準備からだ。
私の準備は待ってもらえないし、私も旦那さんが待っていると思うとあわてて準備できない。
顔を洗って、お化粧の準備。
ファンデーションを塗ろうとしたところで、香の泣き声。
結局、お化粧をする前に香からの呼び出し。
今日もすっぴんかぁ。
そう、小さく息を吐きながら香のところに飛んでいく。
旦那が起きて香の隣でお腹をポンポンしている。
「香ちゃん、お腹すいたのかな?
それとも、おしっこかな?」
ポンポンとお腹を叩いてあやすだけで、おむつを確認することもない。
私は息を吐いて、声をかける。
「直さん、おはよう、香のこと見てくれてありがとう」
香のおむつを確認。
濡れていたので、枕元に用意している新しいおむつとおしりふきを手元に引き寄せおむつを交換する。
そこまでやったら、また旦那さんに声をかけて、私は手を洗いに洗面所に行った。
手を洗うために立ち上がると、香がまた泣き始める。
あ~、これはお腹がすいてるんだな。
「敬子ちゃん、香、お腹がすいてるみたいだよ」
分かってる!心の中でつぶやく。
香のことが好きなくせに全然お世話をしない旦那。
口だけ。
勿論、あやしてはくれるけど、
抱っこもしてくれるけど、
それだけ。
何故、私だけが家事も育児も行っているのだろうか、、、
よくわからなくなってくる。
これから楽しい時間が待っているはずなのに、朝のこの一瞬で一日が終わった気がしてしまう。
香への怒りがなくなってきたら、今度は旦那に対する怒りが湧き上がり始めた。
高原先生がそう言えば言っていた。
「赤ちゃんへの怒りは本来別の人に向けるべき怒りです」って
あの怒りは本来彼に向けるべきものだったのかもしれない。
怒りを出してしまうと、喧嘩になるし、私はどう頑張っても勝てないと思うからいつもグッと我慢してるけど、だからか、最近すごく苦しい。
香にいつも癒されているけど、旦那さんがいると苦しい。
近々、香を連れて、少し実家に帰ろうか、、、、
私たち家族は動物園に出かけた。
結局私は日焼け止めだけ塗ってすっぴんで香の荷物だけもって出た。
香は動物園で終始ご機嫌だった。
動物を怖がるかもって旦那と話しをしていたけど、
全然怖がらず、興味津々でジッと見ていた。
私も外なのが良かったのか、
香の機嫌が良かったからか
最近で一番穏やかに過ごすことが出来た。
彼は何一つ変わっていない。
私のこと好きではないかもしれないけど、、、
それでも、付き合っていたころよりも優しい。
私の荷物を持ってくれたり、
なにより、表情が全然違うのだ。
だから、少々家事を分担してくれないくらい、許してしまう。
惚れた弱みだ。
結局、どんなに怒りが出たって、私は彼に嫌われたくない。
だから、怒りと嫌われたくない気持ちで心が苦しくなるのだ。
その苦しみを香の笑顔に癒されて、
時々デレッとなる旦那に癒されて、
私は毎日を過ごしていくのだ。
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