第十四話 「第一編集局」
「いや...あんまり眠れなかったですね...」
「時差もかなりあるからな―――、」
「私、けっこう寝れましたよ」
「(だりーなー...)」
日朝新聞の部下たちを従えながら、
隆和たちが旧イスクラ・コムソモーレツ、
現藻須区輪亜部新聞社となった
あまり新しいとは言えない、社屋の中に入って行く
「(・・・・)」
"カッ カッ カッ カッ...."
部下たちの前を進みながら、隆和は三階にある
第一編集局を目指して進んで行く....
「(・・・~~~)」
三階へと向かう階段を登りながら
建物内の周りを見ると、これから
自分達が仕事をする事になった
藻須区輪亜部新聞社の社屋が目に入って来る...
「(...)」
「あんまり、キレイとは言えないですね」
「・・・・」
"カッ カッ カッ カッ....
一瞬ゆかりが口から出した言葉に
何の考えもなく同意しかけるが、
置かれている状況を考え
隆和は無言で階段を上って行く
「(でも、確かにあまり....)」
"カッ カッ カッ カッ...."
あまりいい考え方だとは思わないが、
この藻須区輪亜部新聞の社屋を歩いていると、
この建物の中は明かりも乏しくビル自体の築年数も
相当経っているのか、かなり老朽化した
建物の様な印象を受ける
「今日は何するんですかね~?」
「・・・・」
"カッ カッ カッ カッ....
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「―――エモイつぁんッ!」
「林さん....」
「まてましたヨ!」
3Fの第一編集局まで辿り着き、
日朝新聞の社員たちが部屋の中に入ると
昨日(さくじつ)自分達を空港まで迎えに来た
アジア系の、おそらく中国人だと思われる
"林 文青"
が満面の笑みで側まで駆けつけてくる
「・・・どうネ きのは、ネムレタ?」
「あ、ああ、何とか...」
「ロシアは、寒いネ。
暖房とか、調子どうですか?」
「・・・・」
どう言う仕組みになっているのかは分からないが
アパート自体の造りはあまり
立派なものだとは言えないが、
部屋の中はどこからか暖気を取っているのか
室温自体は快適その物で、上着を着ずに
Tシャツ一枚で過ごせる程の快適な温度だった...
「いや、まあ、部屋の中は過ごしやすかった。」
「そうネ」
"カタタタ カタタ"
「(・・・・)」
林と話をしながら三十畳以上ありそうな
モスクワ支局の編集局内を見渡す
"カタタ"
「Эй! Кто сегодня
прикрывает политотдел!?
(おい! 今日は政治部の取材は
誰が行くんだ!?)」
"ガタッ バササッ"
「Вальренчев ...
Как я сказал вчера,
мы не можем двигаться
вперед, пока не
заполним большой
разрыв между
нами ...
(ワルレンチェフ...
それは、昨日も話した通り、
私たちの間にできた
二人の大きな隙間を埋めてからでないと
前に進むことはできないわ...)」
「(・・・かなりしっかりしてるな...)」
「Глупо! Я не могу
говорить о
возвращении
без записи!
(バカヤロー! アポ無しで取材断られて
帰って来たなんて話にならないんだよ!)」
「нет...
(い、いえ...)」
「Приходи еще!
(もう一回行ってこい!)」
「Да ....
(は、はい....)」
"カタタタタ"
「(・・・・)」
職員たちが何を話しているかは分からないが
何かこのモスクワ支局の雰囲気から、
整然とした"エネルギー"の様な物を感じる
「あー...エモイつぁん」
「あ、ああ...」
支局の記者たちに目を取られていると、
林が隆和、そしてその後ろに張り付くように
ついて回っている日朝新聞の局員たちに目を向ける
「あー、あなたタチは、トニカク
まだ、この藻須区輪亜部社に、来たぱかりよ」
「あ、ああ、そうだ。」
大した説明も受けず、自分達日朝新聞の社員たちは
このモスクワ支局まで出向して来たが、
肝心の仕事内容などについては
全くと言っていい程聞かされていない
「ソレて、アナタたち、また、
ここキタぱかりて、何をするか
とにかくワカラナイ。」
「・・・・・」
林がよく分からない笑みを浮かべながら
言葉を続ける
「ソレて、あなたたちはイマから、
このモスクワ支局で
どんな仕事するか決めるのに
"メンセツ"してもらうことになてるよ」
「面接?」
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