第五話 「ロシアにて」
"シュゥゥウウウウウウウウ...
「ここがロシアですかー・・・」
"ピィィィィイイイイイイイイイッ"
遥か日本を離れ、飛行機に揺られる事
10時間程。
「けっこう治安とかもいいみたいですね」
駅のホームで、隆和は自分の隣の席に座っている
新人女性社員
田中 ゆかりに目を向ける
「・・・そうみたいだな」
空港の煩雑(はんざつ)な手続きを済ませ
隆和達日朝新聞社の一行は、
自分達が降り立ったモスクワの中心部から
少し離れたシェレメチェボ空港より、
日朝新聞の支局があるモスクワ中心部へと走る
シェレメチェボ空港内にある、
アエロ・エクスプレスを利用するため
駅のホームで電車を待っていた
「ひぃぃいいっ!? ひぃいぃいいっ!?」
「(・・・まだ言ってやがるのか)」
「デ、デスクっ!?
で、電車ッ!? 電車ですよっ!?」
「お、おい、三咲...!」
「で、電車っ!? で、デスクッ!?
"電車"ですよッ!?」
「(・・・・)」
"シュゥゥゥウウウウウウウ..."
「あ、列車来ましたよ」
「ひ、ひぃぃいいっ」
「・・・・」
定期的に奇声の様な声を発している
三咲から目を背け、自分達のホームに停まった
列車に目を向ける
「あんまり、人乗ってないみたいですね...」
"プシュゥゥウウウウウウウ....
「・・・よく分からんが...」
目の前に停められた車体全部が
真っ赤な色をした列車を何となく見ていると、
その列車の扉が当たり前の様に開く
"プシュゥゥゥゥウウウウウ―――
「・・・・」
"ガララ"
「(――――、)」
"コッ コッ コッ コッ....
「―――ああ、アナタたち、
もしくは...―――ニチアサ新聞の人?」
突然、列車から降りて来た男が
ホームの中を見渡しながら辺りに人影が
無い事を確認すると、座っている隆和達に向かって
話し掛けてくる
「あ、あんた..."林(りん)"さんか?」
「・・・そうヨ」
ホームの椅子に座りながら
近寄ってきた男を見ると、男は
自分達と同じアジア系の顔つきで
長髪の痩(や)せた男だ
「・・・・・」
「ひ、ひいっ」
「み、三咲、とりあえず何か食え」
「―――騒ぎすぎじゃないですか。」
「(・・・・)」
「ひ、ひぃっ ちゅ、中国....!」
「・・・・」
電車から降り立った林は隆和たちの周りにいる
日朝新聞の社員を無表情で眺めながら、
再び、隆和の方に向き直る
「・・・アナタたち、私、
支局長の命令で、迎えくる言ってます」
「あ、あなたが?」
「―――そうよ」
ゆかりの言葉に短く答えると、林は
不敵な笑顔を向ける
「・・・この列車で、モスクワ市内の
支局に向かいます。
.....付いてきて」
「・・・・」
"ガタッ"
「ひ、ひぃっ ちゅ、中国ーーっ!」
「まだ言ってんのか、オマエ」
「いい加減落ち着いたらどうですか?」
"シュゥゥゥウウウウウウウウ....
荷物のトランクを手に取ると、
日朝新聞の一行は先を歩いて行く
林の後姿を追って
真っ赤な列車の中へと入って行く....
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