宇内

 宇宙とは、世界とは、外と隔てられた作られた場である。

 宇宙の外にはさらに宇宙がある、世界の外にはさらに世界がある。

 空間とはそこに何かしらが存在しうる事が出来る可能性を秘めた場の事を指す。

 隔たりとは干渉のし易さと、干渉時のベクトルや方法論、その過程に於けるやり方の違い、どの様な結果と経過を齎すのかの違いが存在する、隣り合う場の間にある隔たりだ。

 宇宙の外には宇宙がある。宇宙の内には宇宙がある。

 世界の外には世界がある。世界の内には世界がある。

 宇宙とは場、世界とは隔たり。

 此処は隔たれ、何かが存在するかも知れない場。

 宇宙は世界、世界は宇宙。

 宇宙の外と内には世界があり、世界の外と内には宇宙がある。


 此処はそんな数え切れない程に存在する宇宙世界の一つ。

 便宜上第一世界と呼称しよう。

 この第一世界は、この世界を呼称する為の名前すら存在していない、ただ何かが存在しうる可能性があるだけの場。

 そして、この第一世界の外側にはさらに世界が存在する。

 便宜上この世界を原初世界と呼称しよう。

 原初世界に存在する、とある文明の利器によって、第一世界は隔たれ誕生した場だ。

 どうやら、この第一世界は原初世界で生まれ発達した文明によって創造されたケースの世界らしい。


 此処は原初世界のとある場所。

 惑星地表面上だけでは無く、原初世界に存在する銀河の一つを手中に収め、他の銀河にも版図を広げんと、発達し続けている国家に身を寄せるとある人物が居る場所。

 広大な…無限とも言えるような宇宙の距離という問題を解決し、三次元存在を安全に四次元移動させる術を見出した銀河間国家の国民が居る場所。


 彼は最早生物と呼べるような存在では無かった。

 だが、確かに生物として発生した名残が未だに残っている存在だ。

 その証明に、生きる為に生物が保持している欲求が必要な種族であった。

 それは、どれ程優れた器を…肉体を得ようとも、彼が彼としての精神を保持し維持する為には、生物としての欲求を満たす為の様々な行為を行える肉体と精神である必要があると云う事。

 それは生理的欲求から心的的欲求までに辺り多岐に渡る。

 むしろ、これらがあるからこそ、彼は国家の定める所の知的生命種として認定されていると言っても良いだろう。

 優れた技術は、知的生命種を知的種へとする事さえ可能にした時代にあった。

 そんな中で、彼は知的生命種として国家に所属していた。


 肉体は技術によって進化した。

 知的生命種は知的生命種として認定されるだけの状態を維持したまま、死ににくい肉体、老いにくい精神を手に入れた。

 この死ににくい身体を手に入れて、増える一方である知的生命種ではあるが、それでも、未だに宇宙を満たす程の数には程遠い。

 未だ銀河一つと少し程度の版図だった。


 彼はマイセリウム通信網上に存在する、精神世界で購入したパーソナルスペースに接続した。

 この時代になると、マルチタスクと表現しうる以上のマルチタスク、並列思考とも思考上の並列存在とも呼べる事が出来るようになっていた。

 肉体は原初世界で普通に生活を営みながら、精神世界側でも同時に活動する事が出来た。

 さて、話しを進める前にマイセリウム通信について軽く説明しておこう。

 これは、簡単に言えば距離を無視して通信が行える通信網の事を指す。

 このマイセリウム通信網は、同個体存在―同じ個体から発生した個体は、全て同じ意識の元で操作出来る存在―である、コウマクノウキンと呼ばれる菌類を活用した通信網だ。ちなみにマイセリウムとは菌糸と言う意味合いを持つ言葉だ。

 そして、このマイセリウム通信網はコウマクノウキンの精神の繋がりを利用した通信網で、コウマクノウキンの菌糸を封入したインプラントを、思考する為のハードウェア…彼の場合知的生命種なので、所謂脳と呼ばれる臓器に刺す事で通信網にアクセスしているのだ。

 ただ、まあ…技術によって進化した彼の脳が、読者の皆様が想像する脳と同一の機能を保持しているのかは別の話。

 通信網の話しに戻そう。

 このマイセリウム通信網とは、同個体存在であるコウマクノウキンの特性を活用した通信網だ。

 つまり、コウマクノウキンの精神活動上で行われている情報のやり取りを、間借りして通信をやり取りしている。

 ちなみにだが、このコウマクノウキン、知的生命種認定を受けている立派な個体である。

 そういった事情から、様々な問題が導入当初時に起こっていたのだが、それも今は昔のお話し。

 現在は、それも含めてそういう物だよねと、コウマクノウキンという存在がそこにいるというのが当たり前の価値観となった時代であった。

 さて、かなり話しが脱線してしまいました。

 話しを一端纏めると、知的生命種と言っても、惑星地表上で生活を営んでいる知的生命種とは全くの別物と言った方が良い存在が彼と言う事だ。

 それが例え、見た目的に炭素系人型哺乳類型知的生命種、つまり見た目上は普通の人に見えたとしても、彼は読者の皆様が思い描くような人間ではないという事。


 そんな彼が今何をしてるのかというと、所謂お仕事中だ。

 この時代の知的種ではなく知的生命種の主な仕事はコンテンツ作成が主流。

 彼はその中でも遊びに関するコンテンツ作成を主として行っていた。

 では、彼が作る遊ぶ為のコンテンツとは何か?

 高度に発達した文明の娯楽は、神の遊びとも言い表せる段階へと至っていた。


 独自の法則によって管理された場、つまり下位世界とも呼べる空間を作り出し。

 現実世界では体験出来ないような体験を経験するコンテンツを作り出し提供する仕事が彼の仕事。

 ゲームクリエイターが彼の仕事だ。

 ただ、惑星地表面上で生活していたときに存在していたビデオゲームとは違い、実際に世界を創造してそこで遊ぶゲームだというのが、読者の皆様が思い描くだろうゲームとの違いだろうか?

 そうだな、ちょっと遊び半分で言うならば、ゲームクリエイター(神)とでも言ったところか。

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