一緒になるという約束
ハザマは、冷や汗が顔を伝うのを感じた。
呼吸が浅くなる。汗は次第に量を増し、身体中を濡らしていく。
最初から――。
違和感がなかったと言えば、嘘になる。
ハナコとカフェテラスで食事――そう、食事、をしながら、横目で見ていたモニター。
いつだって今まさにハザマがいる玉座の間が映し出されていて、女王ミライが溢れんばかりの笑顔を娘たちに送っていた。
それなのに、目の前の女王の無愛想なこと。
状況に流されて、その当たり前に思い至らなかった。自分には笑顔を向けられる価値などないと判断されていると考える方が、絶対的に自然だった。
女王ミライは己のことのはずなのに、『彼』とミライを語る女王の口調は、他者の物語を淡々と語り聞かせているようだった。
そしてこの女王。
サクラのことを、なんと呼んだ?
女王ミライ以外が全員姉妹たるハニカムランドであえて、サクラが特別な姉妹関係を結んでいたのはたったひとりだけ――。
「ハナコ……?」
ハザマは震える声でそう呼んだ。
「はい、ハザマ様」
女王は応えた。
「あなたと一緒になると言った、ハナコです」
ハナコはゆったりとしたスレーブから伸びる白い手を、自身の胸にあてた。
しゃらしゃらと、優美な音が響きそうなその仕草は、恐ろしいまでにハナコを高貴に見せている。
それが頑強な作業着に身を包んでいたハナコと同一人物だなんて、どうして思えよう。
いくら顔が一緒だからといって――。
ハザマは思わず一歩前に出た。
一寸の体力もない肉体が悲鳴を上げ、その上親衛隊のひとりに頬を殴られ、それでも玉座に近づこうとする意思は止まらなかった。
「どうして、どうしてお前がそこに!? ミライじゃなくて、なんでお前が女王なんだよ!」
それは、『献身』の事実よりもよほど納得がいかないことであった。
約束の場所で会った、あれが最後の逢瀬となることを、覚悟したというのに。
「言ったでしょう。時が成ったのです」
「お前は相変わらず意味がわからん! じゃああの時約束の場所で俺を待っていたのは誰なんだ!?」
「あの子はネムさんです。あなたの名前と様相を知っているネムさんに、ハザマ様をお迎えにあがるよう命じたのです」
ハナコがこともなげにそういうと、ハザマは言葉に詰まった。
ちらりとサクラを見ると、サクラの目からは最早光が失われている。
妹を『献身』から救い出したいがために信じて託した男が、衣装を変えただけで妹のことを識別できなくなっていた。
どころか、その男は駆け落ちをするその瞬間まで、妹と別の女と間違えていた。
サクラの心中を察することは容易だった。だったが――。
「……ハザマ様、女王はどのように代替わりをするかご存じですか?」
ハザマが釈然としない気持ちを上手く言葉にできないでいるうちに、ハナコは話題をコロコロと変えていく。
そういうマイペースさは、確かにハナコだった。
「……いや知らん。虫けらを参考に造った、こんなイカレた国の制度なんて」
「ミツバチのコロニーに女王はいても王女はいません。巣を形成する蜂は、すべてが女王の子供。それはすべての蜂が、王女でもあるのです。……では、その中からどうやって、次代の女王が選ばれると思いますか?」
ハナコは玉座から立ち上がり、床をコツコツと歩く。
ハナコが一歩歩くその動作は、間違いなくハナコのそれであるのに、気品に満ちていた。とてもついこの間まで外界任務で命を削っていた末端の働き蜂には見えない。
「ハナ……コ……」
ハナコはサクラの前に膝をつき、その頬を撫でた。
ハナコを目と鼻の先にしたサクラの瞳には星が散り、頬はほんのりと赤く色づく。
「女……サ……」
「無理なさらないで。もう私を妹として扱うのはとても苦しいでしょう。働き蜂としての本能に抗う必要はないのですよ」
ハナコがレンゲに向かって頷くと、間もなくサクラの拘束は解かれた。
力なく床に手をつくサクラを、ハナコはふんわりと抱きしめ、髪を撫でる。
「お姉様。私が女王になったのは、あなたの功績です。あなたはずっと冬であったハニカムランドに春を呼び込んだのですよ」
同じ容姿をしたハナコとサクラであったが、それでも少し前ならばサクラが姉で、ハナコが妹であると、ハザマは納得できた。
しかし、今はどうだろう。ハナコの腕に抱かれ、恍惚ともとれる表情でハナコを見上げるサクラは、自分よりもずっと雄大で高尚なものの一部になっているようにすら見える。
ハザマは、この時少しだけ思った。
自分も、自分以外の男でさえも――あの空間に立ち入ってはいけなかったのではないか、と。
「数多存在する働き蜂の中で、『特別な食事』を与えられたもののみが、働き蜂から女王蜂の肉へと生まれ変わっていく――」
「特別な……食事……ですの……?」
ハナコの言葉を反復するサクラの口調から、締まりが失われていった。
「ハザマ様。私が普段何を食べていたか、ご存じでしょう?」
サクラを慈しむ手を止めないまま、ハナコはハザマに話を振る。
面白くない光景だ。異常だ。
ハナコが自分を、片手間に扱うその様子は、不快だ。ハナコをミライと勘違いしていた時は、そこまでの苛立ちはなかったのに。
いくら綺麗に着飾ったって、いくらたくさんの美しい少女を侍らせたって、所詮お前は、固くてまずい飯を食っていた、ハナコじゃないか――。
「
「携帯食は――」
サクラが、うわごとのように言った。
「『献身』によって得られた肉ではなく、外界の食事を口にする栄誉を得られるのは、ハニカムランドにおいて女王様ただおひとりだけ――」
「そうですね、さすがはお姉様。賢い子です」
ハナコに褒められたサクラはふにゃりと相好を崩す。
「女王ミライの食事を用意するあなたの元へ『献身』に向かった私は、偶然携帯食を口にしてしまって……それからですね、お姉様が女王ミライの為に用意された『携帯食』を、こっそり私に食べさせるようになったのは……」
「ええ……あの瞬間から私は……貴女様がかわいくて仕方なくなって……姉妹の肉を食べさせたくないと強く思うようになって……」
そして、ハニカムランドを女王ミライが統治する影で、ハナコは『特別なご飯』を食べ続けて人知れず女王へと変貌していった。
サクラのあの様子を見れば、ネムも、スミレとユリも、無愛想なハナコに妙に惹かれていた意味が理解できるというものだ。
時が成った。
ハナコはそう言っていた。そう言って、約束の場所には現れずネムを差し向け、ハザマを玉座の間まで引っ立てた。
ハナコの王冠が、厳かに輝いている。
「俺をどうするつもりだ?」
昨日までのサクラは、真実ハザマがハナコの手を引いてハニカムランドの外へと逃げてくれることを祈っていたはずだ。
しかし、ハナコは昨日よりずっと前から、そのつもりは毛頭なかったはずだ。ハザマに対する非人間的扱いがそれを証明していた。
そして、疑問はまだまだ残る。そもそも、だ。
「ミライは――お前の母は、どこに行ったんだ?」
そう。
ハニカムランドは、ひとりの女王が、たくさんの少女を支配する国。
それが大前提のはずだ。
現に、玉座は、ハザマの目の前にたったひとつしかない。
その玉座に、ハナコはサクラを愛でるのをやめて座りなおした。
そして、中空に腕を掲げる。
カーテンを引くように、空を掻いた。
すると、先ほどまで『彼』と少女ミライの凄惨な事実を見せつけてきたドーム状の天井に映る映像が切り替わった。
そこに映ったのは、そびえたつビルの群れ、真顔の女王の姿を映した街にひしめくモニターの数々、よく舗装された道路を理路整然と進むさまざまな種類の自動車、今は外界の猛吹雪の様子ではなく、一面に巨大な女王の顔を映した半円の天蓋、そして――。
「……あれ? 」
どういう理屈でそうなっているのか全くわからない、街中で絶え間なく浮遊する虫のような形をした謎の巨大オブジェ――。
――が、街から忽然と姿を消している。
街のどこにいても遠目に見えるような、奇妙な虫だったのに。いや、虫と呼ぶよりも、その姿は――。
「あれはミツバチだったのか……?」
ハザマは頭の中で結びついた記憶と事実を、思わず口に出していた。
映像の向こうでは、街を埋め尽くすほどの少女が、モニターの、そして天空の女王に向かって手を振り、熱狂的な声を上げている。
熱に浮かされたかのようなその様子は、明らかに尋常ではない。
「ハザマ様、『彼』はミライを自分だけが独占するため、ミライをミツバチに見立てて造り替えました。ゆえに、たったひとつだけミライに与えなかったものがあるのです。それが何かわかりますか?」
消えたミツバチの巨大オブジェがなくなることで、そして街はお祭り騒ぎになっていることで、ひと月見続けてきたハニカムランドに覚える違和感はそれは凄まじいものだった。
時が成った。
ハザマにその短い言葉の意味は理解できなかったが、このハニカムランド全体を覆い尽くす規模のナニカが起きていることくらいはさすがに察せた。
「それは――オトコなるものを産むこと」
かつて自分がハナコに向けた質問を、ハザマは思い出した。
『この国に男はいないのか?』
その問いに対し、ハナコはこう応えた。
『ハニカムランドには女性しかいませんよ』
当時ハザマはそれを否定し、『彼』がこの国にいるはずであることも根拠にハナコの言葉を参考にしなかったのだ。
「ミツバチの女王は、ごくわずかですがオスを産みます。ハニカムランドの女王がまぐわい、娘を産むためには、数少ないオトコである息子とまぐあうことが必須。しかし『彼』は、たとえ息子と言えどミライに己以外の男の手を触れさせることを許さなかった。ゆえに――」
ハザマは、今一度『彼』のことに思い当った。
愛する少女を無理矢理女王蜂に造り替え、血を分けた実の娘たちの『献身』によって、安寧と平和が約束された狂気の王国ハニカムランド。
それを創造した『彼』のことを。
「なぁ……『彼』は……」
昨日までは、ハザマが人生で唯一こうありたいと心の底から願い続けた『彼』。
ハナコやサクラ、スミレやユリ、レンゲにユリにネムにヒマワリや、その他大勢の少女たちの父なるもの。
彼女らの存在が現代にある以上、ミライと共に『彼』は生きているはずである。
「いや……『彼』も……ミライも……一体どこに?」
「『彼』は解体されました」
およそ人間相手に使うにふさわしくない言葉が出た。
しかしその言葉が穏便なものではないことくらいは容易に想像がつく。
ハザマの頭を占めていく、時が成った、という言葉……。
「まさか……『献身』が? 『彼』にまで?」
「『彼』はハニカムランド建国以来ずっと『献身』をし続けてきましたよ」
ハナコの発言は、本当に要領を得ない。
きっとハナコなりに端的な事実しか言っていないはずだが、状況の背景を知らないハザマがその真意をすくい上げるのはあまりにも困難である。
提示された一から十までを察せないハザマに、在りし日のサクラは何度もため息をついてきた。
疑問符を浮かべて口があわあわとなっているハザマの様子は眺めるハナコの顔は、少しだけサクラのそれと似ているように見えた。
「『彼』はずっと、ハニカムランドのたったひとりの雄蜂だったのです」
「雄蜂……」
「『彼』はミライを女王蜂に造り替え、そして自らを雄蜂に造り替えた。ミライが何年も、何十年も、何百年も――永劫自分という雄蜂のみと働き蜂を量産できるシステムを構築した。これが『彼』がハニカムランドを運用するにあたっての基礎思想です」
かつて、純粋に憧れた『彼』という人間の――そのおぞましさには、底がないのかと思った。
ハザマの故郷では、男が女と添い遂げたいと願った時、そこに存在したのは男側の都合のみであった。
女は拒否すらさせてもらえない。誰かの妻であれ、初潮も来てない幼子であれ、女という生き物は男に見初められたその瞬間に心身の所有権を奪われるのだ。
ハザマは、そんな故郷が、そんな社会の構造が、ありえてはいけないものと思ってきた。
だからこそ、『彼』というひとりの男が、純粋な愛を手に入れたことを伝えた物語の美しさがハザマの心の中で一層に映えたのである。
「あぁ……」
ハザマは手で両目を覆った。
それでも、現実の『彼』の姿は消えてはくれない。
結局『彼』も共同体のケモノ同然の男たちと何一つ変わらない。
変わらないどころか、比較するのもおこがましいくらい気持ち悪い。
ミライは、『彼』に捕らえられてから途方もない年月の中、独占欲という名の毒牙にかかっている。
ハニカムランドという地上の楽園が存在するということはつまり、そういうことなのだ。
肉体はとっくに憔悴しきっていたし、魂すらも粉々で、ハザマは今自分が呼吸しているかもよくわからなかった。
今日告げられた数々の不都合な真実の中で、ずっと自分の芯であった憧れが塗りつぶされたということが、きっと何よりも堪えていた。
まだ見ぬ『彼』の幻が頭の中に浮かんでは消え――そのときハザマは、ハッと息を飲んで涙の流れ続ける目をハナコに向ける。
「……いや待て、『彼』は解体された、と言ったな」
「ええ」
ハナコの指が、真っ直ぐに壁を差す。
釣られて視線がそちらに向かい、その瞬間。
ハザマは走ろうとした。
親衛隊の三人に乱暴に止められて、それでも走ろうとしていると、ハナコが何かしらを発言し、途端に解放された。
ハザマは、ハナコの指の先に、しかと見た。
一歩歩くのにも激痛を伴う身体で、ハザマは街の様子を映し続ける壁に体当たりするように張り付く。
ハザマは、しかと見たのだ。
昨日までそこにあったはずの、街中で絶え間なく浮遊して存在を主張し続ける、ミツバチを模したオブジェ。
「あれが……『彼』……」
よく見れば、そのオブジェは浮遊こそしていなかったが、地面に横たわって確かにそこにあった。
しかし、建設作業に従事する少女たちが周りを取り囲んでおり、効率的に、そして仲良くオブジェを重機で破壊していた。
文字通りの、解体である。
「あ――」
『彼』は――。
ずっと、ハニカムランドにいたのだ。
ハザマは毎日『彼』と、幼い頃からずっと会ってみたい、話してみたい、でも叶わないと信じ続けてきた『彼』と、毎日顔を会わせていた。
『ええ。『彼』はいます』
『いいえ。ハニカムランドには女性しかいません』
最早男では無く、ヒトと呼ぶのも怪しい、ハニカムランドにシステムの一部たる『繁殖機構』として、女王を、そして女王との間に生まれた娘たちを見下ろしていた。
人間をこんなモノに変えてしまえるのは、『彼』という天才のみだろう。
ハザマは再び泣いた。
感情が心の中から溢れ、また泣いて、また吐いた。
汚物にまみれる自分がどういう目で見られているか、それを気に掛ける余裕はなかった。
『彼』は、自らその選択をしたというのだろうか?
ミライと自分だけの王国を造るため?
そこまでミライを愛していたというのか?
愛していた果てのその選択が、それだと言うのか?
ハザマは、いまだ『彼』の解体が続く様子を写した壁によりかかりながら、故郷を出た日のことを思い出していた。
わずかな可能性と巨大な恐怖を胸にしまい、大雪の世界へ飛び出したあの日。
先の見えない吹雪の中を進み続ける中で、ハザマは何度も心が折れそうになった。
しかし、結局は体力の限界まで歩き通せたのだ。
それは、『彼』というひとりの男が遺した希望を道しるべにして、ちいさなちいさな光を目標にできたかおかげ。
「……なぁ、ハナコ」
「はい、ハザマ様」
「もう『彼』は、いないんだな……」
常人にはおよそ理解しがたい理想を成就した『彼』は、どういうわけかハニカムランドを見渡す天空から引きずりおろされている最中だった。
それは、ミライというひとりの少女が『彼』の支配から解放されたということでもある。
歪んだおとぎ話の終着点にいる自覚のあったハザマの心は壊れきっていたが、たったひとつだけ、吹雪の世界を鎖で繋がれて連れてこられ、奇人の改造を施された女王が、ようやくひとりの少女に戻れる日が来たことが――それだけが、わずかな救いをくれた。
これで、『彼』の物語は終わり。
『彼』の理想はここで終わり、ハニカムランドのシステムも『彼』と共に解体が始まる。
そのとき、街中で幸福の賛歌を歌うあの少女たちは、一体どうなってしまうのだろう――。
身体中の液体を抑えきれない感情と共に吐き出したハザマは、それだけが気がかりだった。
しかし。
「いいえ」
ハナコはきっぱりと応えた。
わけがわからないことだらけだった現状に納得を見出し始めていたハザマの言葉を、ハナコははっきりと、否定した。
「ど……どうしてだ。『彼』は今解体されているじゃないか。ほら、最後の破片が粉砕されていくぞ」
壁から実況中継されている変わり果てた『彼』の終焉と、玉座からその様子を淡々と眺めるハナコを、ハザマは交互に見た。
「ええ、それは時が成ったからです」
ハナコが執拗に繰り返す、『時が成った』という言葉。
そして、ハナコが見せつけてきた、理想の世界へ向けて歩き出そうとしたハザマを現実に強制的に連行した不都合な事実の数々。
「時が成ったゆえに――」
ハザマの目の前で、『彼』は死んだ。
「以前より女王ミライが計画していた『彼』の解体が実行された」
ハナコの王冠が、ハザマの顔を映している。
それは自分の顔を思いたくないくらい、ひどく間が抜けていた。
「女王ミライは『彼』から逃れるための好機を何百年も待っていました。しかし、ハニカムランドに暮らす愛娘たちのことは見捨てられなかった。だから、待ち続けた」
ハナコと目が合った。
透明な輝きを放つ瞳の奥を、ハザマは全く見通せずにいる。
「新たな『彼』を」
ハザマの身体にも、心にも、もう何も残っていない。
今日この日、ハザマはもう何度も打ちのめされた。
これからどれだけ親衛隊に痛めつけられても、新たな事実が心を蝕んでも、もうそれらをどうにかする余力など、ひとかけらもない。
そのはずだった。
はずなのに――。
「ひっ」
喉の奥から、そんな音が出た。
同時に体毛が全て逆立ち、瞼が限界まで開かれる。疲労しきった頭が、リミッターを解除し決して使ってはいけないエネルギーまでも総動員して警報を鳴らしている。
「ハザマ様、あなたはハニカムランドにやってきてくれた新しい春です」
ハナコは玉座からゆったりと立ち上がった。
一歩、また一歩とハザマに近づいてくる。
一緒になろうと約束したその少女が、近づいてくる。
「あっ――うわああ――――!!」
きっと、あと少しでも動こうものなら、取り返しのつかないダメージが身体を襲うことはわかりきっていた。
けれど、反射的にハザマは走った。
血走った目を左右に動かし、部屋の出口らしきものを見つけて一直線にそこめがけて走り抜けた。
時が成った――それは、建国の父であり国家運営の装置である『彼』を引きずりおろしてもなお、ハニカムランドを存続する手段を手に入れたということ――。
ハニカムランドを運営する要たる人的リソース――少女たちの供給源を、新たに囲い込んだということ――。
ハザマは、すぐ先に待っている自分の未来を知った途端、居ても立っても居られず逃げ出した。
造り変えられてしまう――。
新たな『彼』にされて、この狂った王国で永遠に少女たちを量産し続ける意思なき機構へと造り変えられてしまう――!
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