旅立つミライ

「なぁサクラ、教えてくれないか」


「何?」


「あんたは、どうしてハナコを特別に扱うんだ?」


「……わからないわ」


「ハナコ以外の他の姉妹のことは愛おしくないか?」


「もちろん愛おしいわ。……そうね、私が女王様の食事を用意する立場にあった時、ハナコが私の為に届けられたの。ふふっ……ハナコったら間違えて女王様の『特別なご飯』を一口かじっちゃって……そこからかしら。ハナコに惹かれるようになったのは」


「……『特別なご飯』……ああ、携帯食レーションのことか。女王ともあろう女が何でそんなものを食うんだ?」


「あなたは知らなくていいの。……どうか、ハナコを幸せにしてあげてね」





「ハザマさん、お待ちしておりました」


 少女はニコリと笑い、その瞬間ハザマは全身に雷を受けたかのような衝撃を感じた。


「あなたを女王の元へ連行します」


 暗転していく意識の中、膝から崩れ落ちていくハザマの元にわらわらと少女たちが寄ってきて、軽々と担ぎ上げる。


 指の端すら動かせず、物のように運ばれていきながら、ハザマはハナコの名前を呼んだが、誰一人として振り返らなかった。

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