焼き飯とチャーハンの違い

踊り場で涙目

第1話

「あっ、焼き飯ひと…いや、やっぱりチャーハン一つ」


「はい、チャーハン一つですね」


「いやいや二つね」


「えっ」


「焼き飯二つ」


「あっ、チャーハン二つですね」


「焼き飯だっての」


「え、や、焼き飯ですか」


「んあ」


「では、焼き飯二つですね」


「あ!?一人で二つも食べるわけねぇだろ!?舐めてんのか?」


「いえ、先程お客様お二つとおっしゃいませんでしたか?」


「言ったっつってんだろ!?

理解できねぇのか!?

一人で二つ食べたら文句あんのか?」


「いえいえ、私共はそんなこと滅相もございません。ただ一応大盛りというものもありまして、そちらの方がお得になるとは思いますがよろしいですか?」


「脅迫かこら」


「はい?」


「お前大盛り頼ませようとしてるじゃねぇか。誘導尋問みたいにしてよ、警察呼ぶぞこら」


「滅相もございません!

ただ普通のサイズのや…チャーハン二つ頼まれるのでしたら、大盛りのや…チャーハンを一つ頼まれた方がお値段的にはお安くなりますのでお伝えさせていただいただけでございます」


「皿洗うのが面倒くさいんだろ。

皿を二つ洗うのが面倒だから一つで済ませようと大盛りを勧めてるんだろ」


「いえいえ、お皿はお一つでもお二つでも喜んで洗わせていただきます」


「本当か?」


「あの厳密なことを言いますと、私ではなく厨房のものが洗いますが、もちろん喜んで洗わせていただきます」


「なんでそんなことがわかるんだよ」


「はい?」


「お前テレパシー使えるのか?」


「いえ…」


「じゃあお前テレパシーも使えないのに、なんで厨房のやつが喜んで一つでも二つでも皿を洗えるのかわかるんだよ!

嘘ついてるな、虚偽罪で訴えるぞ」


「いえ、そんなことはございません!

ただ、いつも皿を嫌がって洗ってるという話は聞いたこともないので予測で言わせていただきました」


「ほら見ろ、予測じゃねぇか!

人間の心なんてもんはな、すぐ変わるんだぞ!お前わかってるはずだろ」


「はい!」


「すぐ確認してこい!」


「かしこまりました」



        厨房



「あのさ、今皿洗ってるのだれかな?」


「え、ボクっす」


「あ、榎本くん。

こんにちは」


「オツカレす」


「皿なんだけどさ」


「皿ッスか?」


「お皿洗うの、一つでも二つでも喜んで洗ってる?」


「はい?」


「あの、お皿〜。

一つでも二つでも喜んで洗ってる?」


「さっきから何言ってるんスカ、なんか怖いスよ」


「ごめん」


        ホール


「怖いと言われました」


「な、やっぱりお前は俺も脅迫してたんだよ。脅迫グセがついてんだよ」


「僕、どうしたらいいですか?」


「怖ぇよ」

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