サンタがうちにやってきた
勝利だギューちゃん
第1話
クリスマス。
町中では、サンタさんの格好をした人たちが、ちらしを配っている。
家庭では、パパやママがサンタになる。
でも、所詮は偽物。
本当のサンタは、存在している。
あなたが、忘れてしまってるだけで、本当のサンタさんには、会っているの。
『また来てくれる?』
『あなたが、私を忘れないでいてくれたらね』
『うん。僕、覚えている』
そう、何人もの子と約束をしてきた。
でも、殆どの子は忘れてしまっている。
それでいいし、そうあるべき。
でも、中には特殊な子もいる。
『ねえ、君は何がほしい?』
私は、まだ幼い彼にそう尋ねた。
『うーんとね・・・』
でも・・・
「さてと、行きますか」
今年も私は、ある人の元で、プレゼントを持って向かう。
私の事を、未だに信じてくれている、彼のところへ。
プレゼントは、ひとつだけ。
だから、トナカイは一頭で十分。
「ルドルフ、いくよ」
彼女のひくそりにまたがり、私は彼のところへと、向かう。
余談だけど、サンタのトナカイは全部、メス。
程なくして、彼の家へとたどり着いた。
彼ももう大人。
結婚をして、家庭を持っている。
彼が小さいころから知っている私としては、寂しくもあり嬉しくもある。
夜中、日付が変わるころ、私は彼の前に現れる。
「メリークリスマス」
「メリークリスマス。今年も来てくれたんだね」
「うん。私の事を信じてくれているのは、君だけだからね」
私は、プレゼントを取り出して、彼に渡した。
「ありがとう。また完成に近づいたよ」
「私としては、未完で終わってほしいな」
「もし、そうなったら息子に引き継がせるよ」
私が、毎年彼に送っているのは、パズルのピース。
それを、ひとつ彼に贈っている。
いつ完成するか、わからない。
ただ、完成するまで、毎年ひとつ持ってきて、私に会いたい。
それが、彼の願いだった。
私は、サンタ。
歳は取らない。
なので、死という概念はない。
あるのは、消滅。
彼が私の事を信じているかぎり、私は存在する。
でも、忘れてしまえば・・・
多くの仲間が、そうやって消滅した。
でも、私は彼を信じる。
いつまでも・・・
サンタがうちにやってきた 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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