ある日、沼のそばで落雷を受けて男が死ぬ。そして偶然にも、この落雷によって沼の泥に化学反応が起こり、死んだ男と全く同じ記憶を持った同質形状の生成物が生み出されてしまう。果たしてこの生まれたばかりの生き物は元の男と同一人物と言えるだろうか……というのが、有名な思考実験の一つスワンプマン問題。考えれば考えるほど面倒になるこの問題だが、本作はこのスワンプマンを大胆にも古典落語の粗忽長屋と組み合わせる!
ある研究所で一人の男のスワンプマンが誕生! ついでにそいつの上司である主幹のスワンプマンも誕生! さらにその上司のオリジナルがしょうもない事故で死ぬ!
その結果、本作では大変奇妙なシチュエーションの葬式が描かれる。自分の葬儀に参加する主幹(スワンプマン)、骨壺を抱えてしんみりしつつも生きている方の主幹としょうもない口げんかをする妻、人手不足の僧侶の代理でやってきたロボット、父親のデジタルクローンを作って持ち込む息子たち……かくして人が死んでいるのに大変にぎやかなコメディが展開される。
個性的な人物が次々登場するせいで、原作以上に馬鹿馬鹿しい内容になっており、中でもやたら謎かけをしたがるロボットのペッピー君が印象に残る一作。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)