必要だから小説を読むわけではないでしょう

 世の中、必要不必要の二元論が増えてきた気がします。それこそネットの、SNSの世界を覗いてみれば、人が気持ちよく楽しんでいるところに「それは不必要だ」と水を差す人がいますし、あるいは会社の上司にそれを感じる人もいるでしょう。
 この作品は、そんな現代社会の縮図です。作品世界はテーマを示す箱庭として正しく機能し、その中で切れ味鋭く問題点に踏み込みます。

 SF作品としての骨格もきっちり持ちながら、皮を肉として貼り付けたこの作品。そのしみじみとした読後感は、読んで初めてわかるものです。