記録情報No.2
一言で殺戮した五千超の
「この街も簡単に落ちたわねぇ。〈加減則〉も現れないみたいだし、頂くとしましょうか。
そう言って、女は視線を走らせ、回収する千の死体を選定する。ほんの一瞬で選び終わったのか、ひとしきり眺めると恍惚とした表情で満足そうに笑った。
「【
そしてまた彼女は自らの言能を叶え、死に絶えた幾多もの屈強な男が、その場でふらりと立ち上がる。男達は、死んだら動けないこと、死んだら命令を聞けないこと、敵の命令を聞いてはいけないこと、そして自我を忘れさせられ、女の言うがままに動く
そのまま女は優雅に、
「止まれ、【
その足先に、小さな金属弾が着弾し、そしてそれはアスファルトを砕き、地を穿つ。女は軽い身のこなしで飛び退き、その攻撃を避けた。
女の目の前に、真っ白の光を纏った少女が二人、現れた。
彼女達もまた、異質だった。女とは対照的なその真っ白いノーカラーコートは、恐らく普通の既製品だろう。それはどちらかと言えば生物的な異質さだった。まるで鏡に映したかのような、左右が反転した見紛うことなき二つの美貌。肩上で切り揃えられた髪は黒かったが、一房、彼女達のそれぞれ右目と左目にかかる胸元まで伸びる長髪は、また光を一切受け付けない白だった。
「あら、やっと来たの、〈加減則〉。遅かったじゃない」
「貴様を殺すために、充分早く来たつもりだが?」
【
「でも、この子達の命を守るには、少々遅かったようだけど?」
「うるさい」
続く【
「……私達が
右目に髪が掛かった少女が、苦し気に、悲し気に目を伏せて呟く。再び顔を上げた時には、その黒き両目には堅い決意が宿っていた。
それから少女達は、ゆったりを身体を構えた。右目に髪が掛かった少女は、前屈みになって今にも飛び掛かるかのように。左目に髪が掛かった少女は、両手の指先を合わせて天に祈るように。
「あぁ、【
「軽々しく私達の名を呼ぶな!」
「許さない。たおす」
その瞬間、少女達の片目、髪の掛かっている方の虹彩が、白く輝き始めた。
「良いわ。精々ここに来た思い出に、戦ってってあげる」
〈
右目を輝かせる【
「行くぞ、
「もちろん、
〈
「だから、ちゃんと私を楽しませてね?」
「ここで死ね!」「これでおわり」
そして今、戦いの幕が切って落とされた。
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