めまい

「終わっったーーー!」

私は背もたれに寄りかかりながら両手を天井に向け思いっきり伸ばす。

すぐさま体勢を戻すと仕事道具を引き出しにしまい、バックを手に取ると足早にオフィスを出た。

仕事が早く終わると気分がいい。定時上がりでこそ無いものの、久しぶりに早く家に帰れそうで満足だ。

我社の帰宅ラッシュとズレているので、エレベータールームには私一人だった。私は上がってきたエレベーターに乗りこむ、一人でエレベーターに乗って帰るのも割と久しぶりだ。


私が乗り込むと、エレベーターのドアが閉まり下に降り始める。


…長いな。


私の勤めているオフィスは8階建ての6階だ。どんなに長くても20秒もかからず1階までつくのに、さっきから随分と降り続けている気がする。


そんなことを考えていると、ランプが付きドアが開いた。ようやくかと思って私が出ようとすると、外から見知った顔が入ってくる。後輩の綾瀬だ。


「あ、媛川先輩。お疲れさまです。先に出てったのが見えたんですが、何か上の階で用があったんですか?」


そう言って彼は1階のボタンを押すと、再びエレベーターが降り始める。


なるほど、下に降りるというのはこういう感覚だったか。

さて、どう言い訳をしたものか。

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