第34話

墜落の宇宙巡洋艦・第一発見者は、彼をリーダーと仰ぐ優秀な班員『達』だった



あの時、凄まじい重力と振動がガクガク全身を揺さぶる高速飛行の特殊ヘリ内部、信繁は2パイロット制『実験機』機長をつとめていた。




「信繁さん!

樹海墜落現場の特定ーー…!!

結果が出ました!」


目にも止まらぬ高速、集中力マックスで忙しく指先で装置パネルのタッチ操作をおこなっていた”班内最年少”、技術専門の優秀な班員であるミヤビが叫んだ。


「雅! 間違いないか?」


「えぇ絶対です!!

さっき戦艦から排出された何か…?

多分『脱出カプセル』、それも1人用だと思いますがっ

アッツ

正体不明の物体、詳細な『落下先』出ましたっ!


城〜あっちのメインコンピューターデータともピタリ符合しますっ!

ええ間違い有りませんっ

こっちも今お伝えしますっ!!」


「じゃぁ直ぐに城主にも知らせろ!

熱に強い強力な黒龍で出撃してる


全身、不夜城の作った最新耐火防炎スーツで固めてる分”図体が大柄な我々”

ヘリ乗りの俺達より条件的に軽量な彼女の方が絶対現場到着が速い。


どっちが現場に速いか襲撃者とのデスマッチだ!


子龍シリュウ済まんっ!!

今すぐ俺が下に降りる

もうギリだろ?


生存者が居るかも知れない、操縦頼むっ!」


「はいよ、りょ〜かい、『機長さん』

でもマジで リベリング降下でいいのか?

こんな荒れた現場で、お前死ぬぞ?」


「あぁ〜でも仕方が無い、選択方法なんか他にないだろ?

今回着陸場所無いからな


しかし〜びっしりの樹木のせいで、ペラが少しでも引っかかったらこっちも墜落だ


信用してるが子龍、気をつけろ

そんな事になったら”コイツ”を設計した開発リーダー主任、瑠架に頭っから喰われるぞ?

滅茶苦茶コイツ愛しまくってるからなっっ」


「そりゃそーーーだっ!!」


「降下装置のジェット熱源で居場所特定されたら困る。

原始的な手法で行く〜


もう時間が無い、ホバリング頼むな」

 

「おっしゃー ひっさびさ腕が鳴るぜっ!!

おーーっっ!

お前らイカレタ『班長』のフォローよっろしくなーーーっ?」

 

「まーーかせといて下さいっ子龍さーーーんっ♪」



「くそーー火災で起きる上昇気流がキッツいわ〜〜っっ!!」


ブツブツ言う『機長にチェンジ』した副操縦士・子龍の、あぶないクレイジーな操縦により、ピタリ降下ギリギリの高度に巧に正確な低空飛行とホバリングがおこなわれた。


「行くぞっ!!」


荒くれる上昇気流の恐るべき温度、丈の長い耐火コートを装着し信繁以下降下準備をした人員は身構える。

 

まず最初は信繁が降下



「…!」

「大丈夫そうだな」


「案外せっかちだよな」

「普通先陣は部下の俺らじゃね?」


「まーあの人以上に『山岳に詳しい人』いないからシャー無いとは言え〜っったく無茶するよなー班長〜!」


「くすっっ社長業のご両親、地球上全ての高山最高峰制覇のグランドスラム達成〜アマチュア有名登山家だったもんね!」


「そーそー〜ナスチャ!」


そんなこんなをワイワイ言いながらもジッと待機する部下の目には。


無事下界に到着し、素早くそつなくガスマスクを装着した信繁の、黒色グローブが大きく振られるのが視界に入る。


「出番だ」

「ぅしッッ!」

「ビビって遅れんなよ雅?」

「もぅッッわかってますっ!」


ハンドサインの合図で次々〜

……ザーーーザーーッザーーッと柔軟な黒猫の様、日々の訓練の順番通り、皆柔らかく無事地上に降下、見事な連係プレイだった。


「うわぁぁーーー……」

「あ〜あぁ…」

「ナンジャコリャ…!」

「これはーー…〜酷いっすねぇ……っ」

 

皆思わず顔をしかめた。


ーーーーそれ程現場は酷かった。



この世の地獄

ボウボウ激しく燃えさかる炎と、溶け…燃える有害物質の煙が充満した恐ろしい惨状。



「どうだ?雅」


「信繁さん、生存者は多分1人も居ません」


「そうか」

「……残念です」


〜悔しげに悲しげにポータブル光化学機器を操作中の雅が呟く

 

モニタリングするスキャナー画面には、生命反応とおぼしき光点は無かった



その時ーーーー……

ピーーーーーっと


特徴的で聞き覚えのある、ハッキリした笛の音がその場に居た人員全ての耳に届いた


「信繁さん!」

「……シッツ」


「…」

少しトーンの異なる異音


ピーーーーーー……



ピーーーー……ーーーー……



ピーーー……ーーーーーー……




ピーーーーー……




遠くーーー〜〜…風に乗る音


ぐるり呼応するかに微かに、あちこち様々な場所から反応があった

 

「『目標』〜…見つかったな」


「最初のは 城主ですね」


「あぁ ”あの人”だ」



チャリッッ……


信繁はサッと首に提げていた頑丈な紐を引っ張りだし、グイッとマスクをずらすと吊された銀色ホイッスルを口に咥えた



ピーーーーーーーーーーーー


鋭い音は風に乗り、長く強く樹海の澄んだ空気に木霊した


「ぁあーーーどの班も遠いなーーーー」


「ーーーーですね

ここが1番『近い』らしいです」


 

「所長〜城主の所には俺が行く、後の事は頼んだぞ?

誰かはね飛ばされたり、自力脱出の生存者がいるかも知れない


それから言うまでも無いが襲撃者、必ず来るからな、子龍に連絡しろ


フォロー頼め、上から支援して貰え」

 

「はいっ!!」



信繁は目配せすると、こう言うときの為の班員に指揮権を譲渡し、必要以外の重い装備を外した


『落ちないだろうな』

耳の中のコードレス通信機器をキュッと直す


通話は極小の接着タイプのマイクに取り替え、顎の下にぺたりと貼る


 

『準備完了……!っと』


信繁は信じられないスピードで薮の中を掻き分け、あるいはくぐり抜け、潜り、全速力で地を駆ける獣のように獣道を疾走した



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