第32話

クリストファーは生まれつき体内にメラニンが少ない。

少ないというよりもほぼ欠損している。


単純には『アルビノ』と言われる。

実験動物で色素を白化に固定化したラットが居るが、クリストファーは『王家の出』故、こうした特殊な遺伝子が”青い血”


尊き古き血脈・純潔を尊ぶ結果、通常では有り得ない『同じ様な事』が遺伝学上に起きたんでは無いかと実は思っていた。


 

事実彼の実親である国王は繊細な容姿

 

体も弱く病気に罹患しやすく、コロニー都市を支える優秀な医師団を常にハラハラさせていた。


「でもしょうがないよ」


産まれてきた場所なんか体なんか選べないし?


今ある環境を感謝し、肉体的な禁忌を上手に避けて細く長く生きればいい。


そりゃ……確かに普通の人よりは確かに寿命が短いとは思うけれど?


「それがどうって言うの……?」


1日を3倍にも5倍にも充実させて、自分なりに命の火を光り輝かせて精一杯生きれば良い。


そうして夜のとばりが落ちるように人生の命の灯りが全て消える時、きっとキャシーが僕を迎えに来てくれるだろう。


「よく頑張りましたわね」


トロトロ霞む夢の中で

「貴方なら大丈夫って信じていましたわ」


…そう言って欲しい

 

僕の全て

君が本当に本当に大好きで、今だって大好きなんだよ?



クリストファーは少しもの悲しくそう思う


本当は『僕が君を』迎えに行きたかったのに



「順番が逆になっちゃったね?」


ねぇ愛しい大切なキャシー……


 

『アルビノ』


個人差があるが彼の場合、幼い頃は特に、紫外線に少しでも当たるとあっという間に皮膚が朱く腫れて大変なことになった。



細やかな調整の〜度のついたサングラスと、全日 光をブロックする薬剤と、特殊な長袖の洋服が欠かせない生活を送っていた。


健康の為結果的に生活も夜型にならざるを得ず、ただそうすると”暗い”……

周囲が見えにくい。


つまり、ぶつかったり距離感が取れなかったり


以前ーーーー


そう…こんな事があった


”前から人が来る!”とクリストファーがヒョイッと道を空けたら、どうしてか向こうも同じ行為をする

 

「アレレ?…?」


またヒョイヒョイッとリズミカルに体をかわすと、気をつかったのか同じタイミングで前方の人物も行った。



「何やってんですか?クリス様『姿見の前』で?


アァ〜ひょっとして、わかりました!

シャドーボクシングの練習ですか?

運動にも極めて熱心であられますね!」


「うんそうなんだ、凄いでしょ?」


「お見逸れ致しました

では業務後私が『お相手して』差し上げましょう」


「やったぁっっ!」


知り合いの衛兵が教えてくれなけりゃ、ずっーーーっとずーーっと延々としていた事に自信があった。



つまり視力が極めて悪い彼にとっては日中も夜間も『大変さ』『難儀さ』『可笑しな出来事』は、さほど変わらない。



信繁のニュアンスで彼に対しデリケートな感情を伴う個人的事情


『大きく立ち入ったこと』をあえて聞こうとしたのは信繁のチョットした言い回しを感じ取り、独特な動物的な勘〜


微かなシンパシーを感じたせいだった。


『彼は何かを知っている』と 直感的に思ったのだ。



クリストファーには信繁の妹と同じく偶然に、瞳に少しばかり多く色素があった。


勿論『視力』は弱視で良くはないのだが、しかし、そこまで欠損していたらどうなっていたか?


深く考えると体がガタガタと怯えて震えた。




『まー それならそれで僕には新しい世界があったんだと思う』


でも今までその神様の気紛れのお陰で、この世の美しい物を沢山見ることが出来た。


『僕を取り囲む世界が、生活が美しく満ち足りている。


色彩と輝きの共演だ。


これ以上欲張って、あれもこれもと望んだら神様に申し訳ない。


これは僕への贈り物だ』


無いものをカウントする生き方は性分では無かった。


「奇跡だよね?」

逆に感謝していたのだった。


「クリス様はその体質で、どうしてDー01から紫外線量の強い地球〜


それも特に暑苦しいジャパンに、よりにもよって留学しようと思われたんですか?」


「『シノビ』、ニンジャに興味があったからです」


「ハハハ嘘でしょうそれ」

信繁はクスリと含み笑いをした


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