エピソード1 宇宙巡洋艦襲撃 7−1

「メーデーメーデー、緊急着陸を試みます!!」

 

激しい警報音ーーーーー……

クリストファー王太子は、狂ったように暴走するディスプレイを見つめる自分をボンヤリ遠くに感じていた


宇宙巡洋艦のコックピット内部は騒然とした状況に沸騰し誰しもが声限りに大声で叫んでいたのだ


「侵入者に踏み込まれました!!

もうこの艦は持ちこたえられません!!」


「最新ドロイド達〜防衛ラインも全滅です艦長!」


決死の表情で何とか艦を支えようと、ありとあらゆる手段で奮闘する全クルーと


故郷コロニー…… 

D−01が誇る優秀なスラリとした体躯の艦長の機敏な指令


阿鼻叫喚の怒号と繰り出される的確な命令と瞬く警告ランプの洪水だった

 


「せめて王太子様のお命だけでも!」


「キャサリン様、後はお任せを!!

クリストファー王太子様だけでもお逃がし下さい

我々が囮にーーー盾となりましょう


キャサリン王太子妃様と、尊き王太子様の為にでしたならば皆この命、決して惜しくはございません

全クルーの総意です」


「わかりました

必ずや王太子様を私はお助けして、お救いしにお連れ致します」



「お前達はーーーー”役割”は解ってるな?」


「はいっ!!」



「〜では行けッッーーー頼んだぞ?

皆……

クリストファー王太子様とキャサリン王太子妃様に敬礼!!」


「ハーーーッ!」


ビシッと艦長以下クルー全員に見送られた


騒然とするコックピットをクリストファー王太子は新妻の白い腕で抱きかかえられ引き摺られて出た


一瞬…空白に訪れた静かな時間だったが彼にとっては永遠にも似た<時>だった



 

王太子の最愛の幼馴染み〜

子どもの頃よりお互い見知っていたキャサリン王太子妃、愛称 ”キャシー”


彼女は先日結婚したばかりである自らの夫を有無を言わせずにズリズリと引き摺ってそのまま奥へ奥へと進んだ



「こっちです、お妃様……!

……!ここはまだ安全な『隠し通路』


敢えて設計図に書き込まれていない極秘特殊経路です

ごく限られた選抜メンバー……”我々しか”知りません


〜皆アース…我らの母なる惑星!

地球まで貴方方と共に過ごせて幸福でした


必ず御国へ、ええ、クリストファー王太子様を御父上と御母上の元にっ」


「ここまで案内 誠に有り難うございました

わたくしも貴方がたの後から直ぐに参ります

”しばしのお別れ”ーーーですね」


「!滅相も無いーーー勿体なき有り難きお言葉です」


「?……」


ヒソヒソと彼の妻と ごく若いクルー達が謎めく密やかな言葉を交わし……

彼等夫妻に付き添った…1人1人が胸にピタリ手を置き深々とお辞儀をした


秘密通路区画を仕切る〜ぶ厚い隔壁扉を通り過ぎる度に

特殊超合金〜

超金属製、頑丈な扉の内側に武器〜最新式エネルギー銃を片手に、”必ず残留”……!


その度に逐一、手動にて機械操作を行いリセット

新たな『ロックナンバー』を入力してはメンバーを残しては駆け抜ける



「居たぞ!! こっちだ!!」


遠くで叫ぶ 微かな人の声がした


禍々しい銃声の音が続いた



荒い乱れる吐息…


……最後は彼等夫婦二人だけになってしまう



もう誰も居ない



ハァハァ互いの激しい息の音だけが耳元で海鳴りのように聞こえた



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