第5話 序章⑤

『収監者』は不思議な事に、誰もかれも、いざとなると<脱獄>は望まない

 

彼ら全員、自身の開放へ向けて働きかけられる強大な政治的、経済的、武力による莫大な力量が備わっているのに……?だ


本当に誠〜摩訶不思議な事であった


自らの意思でわざわざ留まり、驚くべき事に〜

必要な時は管理者側を自らが持つ『影の影響力』等で補佐しているというのだ


「共存共栄」……そんな事があり得るのか?!


定期的に政府によって行われる内閣府の諜報極秘委員会で事実は詳細なレポートにまとめられ報告されている


『理由』については必ず毎度、個別の調査によるアンケートが実施された


集計された回答中、最も多かったものは

……驚くべき事に末尾回答欄の「その他」だった



単純に

「ここは面白い」


次点

「退屈しないから」という意見も多数存在した


これは一体どういう事なのか?!


実は『城』にはルール・規約に無い”慣習”がある


「どんな望みも生涯たった一つ叶える」

〜という約束事だ


(但し 五人会議で、毎回かかるという天井知らずの莫大な予算の都合上

彼ら”全員一致”で了承されたものだけらしい)



相変わらず性別は不明だが


『城主』に大概は、1度は皆恋してしまうと密かに言われている


未だかつて誰も見たこともないほどの、極めて素晴らしい美しい美貌の持ち主らしい


収監者達にとって、気になる意中の人物の武勇伝の話題は如何なる些細な事柄も心ときめかすとの事


退屈な日々の格好の暇つぶしであり、又、『自分達を支配する側』への挑戦と


無限の力量の維持に対する問いかけ、それの確認の意味もあるという話である


収監者達は いずれも劣らぬ曲者ぞろいだ

 

だからこそ余計に


自分の想像力を悠に凌駕する、見たことの無い物

この世の果ての世界が見てみたいと夢想する


自らを越える圧倒的に強い者、強大な者が生理的・本能的に好きだ


唯ーーー……それだけだという






今度こそは


「誰かの望み」が達成されないかもしれない




ーーー不吉な不安に血が沸き立ち踊る



<絶対に叶わない筈>の願いが成就達成される瞬間


恍惚と天の楽園を感じる



”我々は運命の神に勝ったんだ”ーーーと


強烈なカタルシス

   



そうーーーー

未だかつて<五人会議>での了承決定後




城主自らが叶える『慣習』が、不履行の事実は無い



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