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 三沢基地――。

 三機のF35戦闘機が、轟音を残してスクランブル発進していった。

 中国北部戦区から飛び立った三機の戦闘機の位置は、正確に捕捉されていた。中国軍は〝ステルス戦闘機〟だと主張しているが、その性能は日本の探知能力を凌駕するには至っていない。

 複数の早期警戒管制機AWACS――E767が配備されたこの空域では、その電子の〝眼〟から逃れることは不可能だった。さらに佐渡島に置かれたレーダー基地では、J/FPS―5個定式警戒管制レーダー装置――通称〝ガメラレーダー〟が半径400キロ以上の範囲の高速移動体を探知する。これらの複数の情報がリアルタイムでAWACSで分析・統合され、そこからの指令がスクランブル機をコントロールしていくのだ。

 海上すれすれを飛ぶ〝標的〟のオスプレイもまた、AWACSの視界から逃れることはできなかった。

 その〝標的〟に、二機のオスプレイが肉薄している。輸送艦『くにさき』から発進した大島たちだ。

 ファントム・プリズンでは不意を討たれた自衛隊は、序盤で周金幣の奪取という失策を犯した。しかし、その装備と日常の訓練――磨き抜かれた練度の高さで、遅れを挽回し始めている。

 日本海の公海上に散りばめられたレーダーの光点は、一カ所に集まろうとしている――。

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