下準備③

「ではでは君たち、始めようじゃないかっ!」


 分かりづらいが今のはトエルブのセリフだ。

彼の持ち込んだPCを接続して、モニターにスライドショーが映っている。


「加茂修一、参考までに聞くが、我々リベリオンを引いた羽山教幹部の数はいくつか覚えているか?」

「3人だったはずだ」

「そう。 これに羽山宗王と美波律子を足して、残りは5人。 この数の何が重要かというと……」


 画面に1から12までの数字が浮かんで、その殆どに黒みがかかった。

残ったのは5th、9th、11thだ。


「羽山教幹部の数というのは、つまるところ牙を持っている人間の数だ。 私達の敵は、この5人の牙所持者。 これらをどう攻略するかが作戦の肝になってくる」

「結構な戦力差だな……俺たちの2分の1くらいか?」


 そうでもない、とトエルブはPCのキーを弾いた。


「知っての通り、羽山教は県下最大級の宗教法人団体だ。 信者総数は推定50万人、私達が潜入するセントラルビルには日に3000人もの信者が出入りしている」


 潜入するにあたって、この信者たちの目をかいくぐることは困難である。

あのビルは警備体制が厳重で、受付を通らずビル内に入ると、階段・エレベーター・エスカレーター等の移動手段に設置された防犯センサーが作動する。

他にも、監視カメラや各部屋のオートロック、各階5人以上の警備員などなど、やましいことがあると言わんばかりに厳重なのだそうだ。


「5人の牙所持者、数千人の信者、それと最新鋭の警備システム。 これら3つを乗り越えてやっと、本作戦は成功と言える」

「遠いな……」


 画面が切り替わって、何人かの顔写真が表示される。

加茂と同じ年くらいの青年と女性が二人ずつ。


「右から5th、11th、9th、彼らは美波律子の直属の部下であり、信頼関係も厚い。 顔を覚えておけ」

「一応聞くけど、牙の詳細は?」


 音無の問に、誇らしげな顔をして答える。


「そこが今回の進歩というわけだよ。 羽山教幹部の牙について、情報を持ってきた。 まず5thだが――――」

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