XX【せから始まるアレ】


「……んー」


 ある日の朝、いつものように起きたのはいいのだが……何か身体が重いようなそうでないような。


「あ、お兄ちゃんおはよう」

「雫、おはよう……」


 起き上がるのもちょっとだるいと感じてしまったものの特に動けないという感じではないのでいつものように起きてリビングまで行くと雫が居た。


「お兄ちゃん? 何か調子悪そうだけど……大丈夫?」


 あーやっぱり雫には分かるか。

 とは言え、目立った症状と言えばそのくらいで他には……ないのかな? いやまだこれから出てくる可能性はあるな。


「うーん……何かちょっとね」

「大丈夫……?」


 心配そうに俺の顔を覗き込んでくる雫。近い近い……って、何変にドキドキしてんだよ!? 相手は雫だぞ? 妹だぞ?


「なんか怠いと言うか……調子が悪いと言うか、よく分からん」

「んー? 熱はなさそうだけど」

「!?」

「?」

「あ、いや何でも無い」


 いつの間にか雫が俺の額に手を当ててきたので少し驚いただけである。熱っぽさは特にないんだよな。


「何ともなくて体がだるい……うーん?」

「雫?」


 何か考え始める雫。

 怠いという時点で何ともないって訳ではないが……今の所、目立った症状はこれくらい。風邪といった感じもしないし、ましてやインフルとかそういう類のものでもない気がする。


「ねえ、お兄ちゃん……いやお姉ちゃん。お腹とかは大丈夫?」

「え? ってか何で言い変えたし」


 さっきまでお兄ちゃんって普通に呼んでたのにいきなりどうして、お姉ちゃん呼びになるのか……まあそれは置いとくとして。


「……確かに何か痛いようなそんな感じがする」


 さっきまで考えてもなかったが……確かに怠いとは別にお腹あたりが痛いような気がする。下痢……でもない感じ。

 なんだろう? 今まで感じたことのないものだが……そもそも腹痛自体あまり起きたことがない。たまにお腹を冷やして痛めた時はあったが。


 ……。


「んーお姉ちゃん……」

「ん?」

「驚かないで聞いて欲しいんだけど」

「何だよ改まって」


 さっきまで考えていた素振りをしていた雫が何かを思い出したのか、はっとなり俺にそう言ってきた。ふざけた感じではなく至って真剣な感じに。


「もしかしたらそれ、生理かもしれない」

「!?」


 ……せいり、セイリ……生理? 頭の中でその単語が木霊する。生理ってあの? いや男でも聞いたことくらいはある。てか、学校の保健の授業で聞いた気がする。


「まだ断言できないけど……もしかしたらトイレ行ったら……」

「分かった、それ以上は言わんでいい」


 凄い言いにくそうな顔をする雫にストップをかける。


「ま、まだ分からないけどね? もしそうだとしたら……ううん。ここは私が教えることにするよ」

「いや無理しなくていいぞ?」

「でもお姉ちゃん初めてでしょ?」

「……お願いします」


 今まで全然気にしてなかったが……そう言えば今の身体は……。









 結局、この症状は雫の言う通り生理のものであり、痛みが強くなった時にトイレに行ったら赤く染まったそうな。

 予め雫から聞いてはいたものの実際見た時は凄い焦った。焦りに焦ったが……何とか雫のお陰でその場を凌ぐことが出来た。


 俺からすれば非常にショックな出来事だったようで2日位寝込んでしまった。いやまさか俺が経験するとか誰が予想できたよ!?


 まじで戻れるんだろうな!?


 その日、お赤飯が出たのは言うまでもない。雫め……助けてもらった手前、強く言えないが絶対笑ってただろ。


 はあ……。

 そんなこんなあったものの、終わった時は安堵したもののそれは束の間であり、これからは約1ヶ月周期で来るとか何とか。


 ……。

 戻れる方法についてはまだ分からない……そもそも戻れるかも怪しいのだが、それは考えないで置いとくとしても戻れるまではこれが続くのかあ……俺は憂鬱な気分になったのだった。



END



_あとがき_

そんな訳で物語内では語られることのなかったシーンでした。

いやあ、これ書く必要あったのかとと……まあ閑話なのでそこは生暖かい目で見てやってください()

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