52【決着】
「……ねえ、雫。これはどういう状況なのかな」
「奇遇だね、お姉ちゃん。私も分からない」
気付けば周りには複数……いや、数十人は居るか? 魔法少女らしき少女たちが居た。魔法省の魔法少女なのは間違いないが……普通とは違う感じがする。何と言えばいいのか……純粋に強い、そんな感じがする。
「色々と聞きたいことはあると思いますが……ここからは私たちに任せてください。こちらも聞きたいこともありますし」
その中でも何かリーダーっぽい魔法少女がそう言ってくるので大人しく頷く。そうすると向こうも頷き返し、数名の魔法少女は俺たちを守るように前に待機し、残りの魔法少女は向こうに居る羽無しドラゴンもどきを囲う。
あっちもあっちで、いきなり現れた数十人以上の魔法少女に何だか驚いているように見える。もちろん、本当に驚いているかどうかは分からないが。
後なんか、さっきの魔法少女もそうだけど雫を見た瞬間驚いていたように見えた。そして俺と雫の顔を交互で見て来るし、何かついていたのだろうか?
……いや、冗談は置いておこう。
恐らく……いや間違いなくそう見てきた子はアイス・メロディーを知ってるのだろうと思う。だからこそ、そんな彼女がこの場に居たことに驚いていた。でもって、俺と雫は見た目は少し違うものの真面目に変身後もそっくりな見た目をしてるのだ。
だから交互に見て驚いていたんだと俺は思う。間違いかもしれないがその可能性が一番高い。俺とアイス・メロディーの関連性にも感付かれたかも知れない。
元々、それは覚悟の上だったしな。それに雫も俺が最後に聞いた時、大丈夫と言って自分の意思でここに居る訳だし。まあ魔法少女の姿何てバレても元がバレなきゃ確かに問題ないんだよな。
「……」
「……」
さて、どうしてこんな状況になったのかと言えば……正直、俺にも分からない。あのアンノウンを相手している間に気付けばこの子たちが現れていたのである。
結構なダメージを与えているはずではあるものの、見ての通りあのアンノウンはまだ生きている。まあ……最初と比べればかなり傷を負っているとは思う。再生能力とかがなければね……。
「マギアアップ」
魔法少女の一人が恐らく魔法のキーワードであろう言葉を紡ぐ。赤っぽい魔法陣がこの場に居る魔法少女全員の足元に出現し、そしてそのまま上に上昇し頭を超えたところで消滅する。何故か俺と雫のところにも出現したが。
「……これは」
「多分、威力向上系の魔法だと思う。これは……魔法の威力が上がるものじゃないかな」
「なるほど……魔法攻撃力バフみたいな感じか」
「うん」
確かに……何となくではあるけど、力が高まっているような感じがする。この状態で打てばかなり強い魔法になるんじゃないだろうか。
「マナリジェネレイト」
次々と魔法が紡がれていく。
しかしその間もアンノウンは攻撃をしてくるものの、前の方に居る魔法少女が攻撃を相殺しているし、アンノウンの注意を引き付けているみたいだ。そのため、こっちにはたまにしか攻撃が飛んでこない。
「見間違いじゃなければ、あの子……ビームでビームを相殺してた気がするんだけど」
そう。時々こっちにアンノウンの攻撃であるビームが飛んでくるのだがそれをその子は同じようなビームを撃って相殺しているのだ。心なしかアンノウンのやつよりも太い感じがする。
「見間違いではないわ。あの子、こっちに飛んでくるビームを相殺してるわよ」
「まじか」
見間違いではなかったようだ。
「ウォールシールド!」
そんな中、ビームではなく俺がもろに受けてしまった衝撃波のようなものを放つアンノウンだが、近くに居たこれまた別の魔法少女が素早く展開した透明な壁? 何かバリアみたいな魔法によってその衝撃波は防がれる。
流石は魔法省の魔法少女と言えばいいのか、回復・支援、遊撃、攻撃……更に回復と支援を守るための護衛と見事なまでの連携でアンノウンと戦っている。
俺1人はもちろん、雫含めて2人でも真似は出来ない。というよりそもそも、俺も雫もどう見てもアタッカー系統なんだよなあ……バフ系の魔法はないし、設置する魔法はあるけど結局それも攻撃魔法だし。
俺か雫のどっちかがサポート系だったら出来たかもしれないが。
魔法攻撃力上昇のバフ……分かりやすいからこの表現で行くか。そんなバフがかかった状態での遠距離攻撃、タンクのような感じでの近距離攻撃……今のところ被弾せずに確実にアンノウンを削れてるのが分かる。
ここからじゃはっきり見えないけど、近距離? の魔法少女が一度攻撃をやめアンノウンから距離を取ったのが見えた。何か攻撃が来るのかな? と思っていたのだがそうではなかったようだ。
少し離れた場所の結構高い位置、これまた別の魔法少女が待機していたのだがその子が自身の持つステッキを高く掲げ、そのまま振り下ろしているところが見える。その時に同時に口も動いていたので魔法のキーワードを言ったのかな?
振り下ろしたのと同時に上空にこれでもかと言うほど目立つ大きな魔法陣から、大きな光る玉? のようなものが姿を現す。
「え、何だあれ」
いや……見たことはある。とは言えそれは現実で見た訳ではなく、魔法とかが登場するゲームとかの中ででの話だが、有名なのはメテオというものだろうか。名前の通り隕石を落とす魔法だ。
そんなゲームとか出て来るような魔法……正にそのもののような魔法なのである。隕石かどうかは分からないがそんな光の玉が空からアンノウン目掛けて落ちてくる。避ける間もなく、凄い音と同時にドラゴンもどきへと落ちるのだった。
それだけではなく、さっきまであのアンノウンのビームを相殺していた魔法少女がいつの間にか移動しており、追撃と言わんばかりに相殺に使用していたビームを放つ。
隕石(暫定)とビーム……その両方の攻撃を同時に受けるアンノウンにちょっとだけ同情してしまう。あのビームを相殺するくらいだし、普通にあれ強いよな……よく分からないが。
砂煙が晴れれば、何ということだろうか……まだ生きていたのである。消滅せずにそのアンノウンはその場にまだ立っていたのである。これには他の魔法少女も驚いていたが、見た感じではかなり痛手を負ってるように見える。
後少し攻撃すれば倒せそうな気がするな……しかし何だろうか。やはり、思ったより強くないような気がする。それともこの魔法少女たちが単に強いだけだろうか。
あの攻撃を受けて生きているということに全員が驚いていたものの、更にそこで追撃したところで予想通り羽無しドラゴンもどきのアンノウンは消滅したのだった。
何ともまあ……これでも結構覚悟していたのにこうも倒されてしまうと何だか無駄だったなあと思ってしまう。とは言え、一応今のところの脅威は倒せたということになるのだが……。
こっちはこっちで色々とありそうだ。
▽▽▽
「アンノウンの消滅を確認しました。同時に、残党の処理も終了したようで暗雲も徐々に消えて行ってるようです。こちらの被害はゼロです」
「良かった……」
その報告に私は安堵する。
ただ気になる点は幾つかある。今回出現したあのアンノウン……思ったより強くなかったということ。Sクラスの魔法少女を筆頭にAクラスとBクラスの魔法少女を合わせた総勢30名を動員したのだけど、倒せたのである。
「元から戦っていた2人の魔法少女の攻撃もあったからじゃないですか?」
「それもあるだろうけど……」
それでも比較的簡単に倒せた。倒せる分には問題ないのだけど、どうも腑に落ちないわね。とは言え嫌な予感がすると言った感じも今はもう消えてるし何とも言えないんだけれどね。
「野良の魔法少女2人の保護も終わったみたいですね」
「そうみたいね」
野良の魔法少女がまず最初に戦っていたのは知ってる。そして片方がフリーズ・フルールだって言うことも。だけど、もう1人の方が予想外だったわ。
「アイス・メロディー……」
いえ、まだそうと決まった訳ではないのだけど……だけどあの容姿は5年前の氷属性の魔法少女、アイス・メロディーに瓜二つだったのよね。私は実際直接話したことはないけれど……。
でもアイス・メロディーは5年前の首都凍結時に行方不明となってる。それ以降、彼女の消息は掴めないし、今の今まで確認されたこともない。
そんなタイミングで現れたのがフリーズ・フルールなのよね。他の皆はどう思っているかは分からないけれど、フリーズ・フルールの容姿は非常にアイス・メロディーと似ている。
少なくとも私と七夜は似ていると思ってる。フリーズ・フルールの見た目を七夜にも伝えたところ、私と同じ反応をしたのよね。そう、姉妹と言われても違和感も何もないくらい。
「本当にアイス・メロディーだとしたら……いえ、それなら何でフリーズ・フルールと一緒に居るの?」
仮にアイス・メロディーだとする。そんな彼女が5年も行方不明だったのに今、フリーズ・フルールと一緒に行動していた。もちろん、違う可能性だってあるけれど。
「偶々……と言う訳でもない気がしますね」
「そうね……アイス・メロディーに似てるだけで別人って可能性もあるし」
「でもあそこまでそっくりな子が居るんでしょうか」
「世の中自分にそっくりな人は3人居るって言われてるし、あり得なくはないわね」
ドッペルゲンガー。
本当かどうかは分からないけれどね……そもそも自分に似た人と会ったことがないし。
それはさて置き……別人にしろ、アイス・メロディーにしろ、氷属性の魔法少女なのは間違いない訳よ。フリーズ・フルールも氷属性だから今現在確認された氷属性の魔法少女は3人ということになった。
まあ、アイス・メロディーだった場合は2人になるけれど……。
「取り敢えず、アンノウンは倒せたのだしそこに安堵するべきね」
気になる点はあるものの、一番の脅威は去った。ひとまず、安心出来る。
とは言え、油断は出来ないけれども……実際、弱い個体ではあるし数も少ないけれどちょくちょくこの場所を狙ってやってくるアンノウンがまだ居るしね。その個体たちは待機している魔法少女によって倒されているので、実質的な被害はない。
最悪の場合、私も七夜も出撃しようと考えていたけれどその必要はなかったわね。まあ、実際出撃したところで今の私たちでどれだけやれるかは分からないけども。
「……」
ともかく、報告を待ちましょう。
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