50【対決】


「アイシクル・シュート!!」

「####!」


 それなりに近い距離でアイシクル・シュートを放つ。この距離なら避ける時間なんてないだろう。あるとすれば最初のようにアイシクル・シュートをビームで薙ぎ払うくらいだろうけど、さっき撃ってたしな。

 氷の礫の弾幕を顔にお見舞いしてやる。大体の敵と言うのは頭が弱点だったりするので、こいつもそなのでは? と思い放ったのだが……どうやら硬いのは全身みたいだ。


「でも、さっきよりは効いてる気がするな」


 心なしか、他の部位に当てるよりもダメージが入っているように感じる。


「しっかし、改めて近距離で見れば見るほど禍々しいなこいつ……」


 何かオーラみたいなのも出てるし……と言っても特にオーラ自体に意味はなさそうか? いや、油断は禁物か。


「$$$!!」


 そう考えていれば、ドラゴンもどきのアンノウンはそこそこ太く、硬そうなしっぽで俺の方に物理的な攻撃を仕掛けてくる。ビームと違って予備動作も見れるので、これはどちらかと言えば簡単に避けられる。

 ビームの方は慣れたとは言え、それでも不規則に放ってくるようになったりしたのでかすってしまうことがある。何となくだがこいつには知能がありそうな気がする。


「……酷い有様だなあ」


 上空に一度回避し、下を見る。

 田んぼであったであろう場所がもうめちゃくちゃになっている。更に言えば近くにあった建物とかも結構崩壊してる。こいつが歩いたり暴れたりするだけでも地震のような地響きが起きるので壊れない方がおかしいのだが。


「っと」


 そんな空に逃げたと言っても、あいつはビームを撃てる訳なので当然ながらこの場所目掛けてビームを放ってくる。それを回避し、再び高度を落とす。

 速度を維持したまま不規則にアンノウン周辺を動き回っておく。予測射撃の如く、ビームを撃ってくることもあるがこっちだって攻撃しない訳ではない。


「アイスニードルっ!」


 数十個ほどの氷で出来た針を飛ばす・


「#”””!?」


 氷で出来た針が一部は刺さることなく砕けてしまうのもあったが、それでもそこそこの数が目の前のアンノウンに刺さっている。そして数秒後、刺さった針が勝手に爆発し冷気が上がる。


 アイスニードル……これもまたあまり使ってないが、効果は見ての通り。

 名前のままで氷で出来た針を飛ばす魔法で、刺さった後に数秒経過するとかなり小さな爆発を起こし冷気でダメージを与える魔法だ。もちろん、刺さった時もダメージがある。


 この魔法も同じで数は自由に増やせるし、大きさも変える事が出来る。刺さらないと爆発しないのであまりにも硬い敵相手だとそこまで効かないと思う。砕けて終わりと言った感じだろうか。

 幸いこのドラゴンもどきにはいくつかは刺さったのでダメージを与える事が出来たようだ。まあ、さらに魔力とかを込めて貫通力と言うか……強化して放てば簡単に刺さるかもしれないな。


「ちぃっ」


 再びしっぽを使って俺のことを叩き伏せようとするものの、それを回避したと思ったら今度は回避先に目掛けてビームを放ってきた。何となく嫌な予感がしたので方向を変えたのだが、正解だったみたいだ。


「面倒くさいな。っと!?」


 あのドラゴンもどきだけを意識していたので忘れていた。

 取り巻きは雫に対応してもらっているが、流石に全てというのは無理だろう。当然、こっちに攻撃してくる取り巻きであろうアンノウンも居る。特にこいつのすぐ近くに居るやつら。


「ったく。アイシクル・レイン……マルチ!」


 空中にいくつものアイシクル・レインの魔法陣を設置する。その下に居るのは取り巻きであろうアンノウンたちと、俺が今相手しているドラゴンもどきのアンノウン、そして俺だ。

 設置しただけなのでまだ降り注ぐことはない。しかし、アンノウンたちはその魔法陣を警戒し始めているようだった。これはまだこいつらの前では使ってないからな。


「アイシクル・シュート!」

「##!」


 上を見るのはいいが、こっちも見た方が良いぞ……まあ気付かれてたようだが。

 アイシクル・シュートを撃てば、相手はまたビームを放ち、アイシクル・シュートを薙ぎ払う。それでも数発はヒットしたもののやはり効果は薄いように見える。


「流石に硬いな」


 アイスバレットですら微妙だしな。

 そうなるとやはり……顔面攻撃が一番いいのだろうか? いや顔面にヒットさせても他の部位よりかはダメージを与えられていた気がするけど、それでもまだピンピンしてるしな。


「#####!!」

「!?」


 そんなこと考えているとドラゴンもどきが物凄い雄たけび……いや咆哮? どっちでもいいが、辺りに響く。うん、凄いうるさい……咄嗟に俺も耳を塞いでしまった。


「またビームか? それなら……って違う?」


 ビームを撃って来そうな感じだったが、そこで違和感。ビームを放つならその始点に魔力の反応があるはずだが、それらを感じれない。だけど、口を大きく開けている……ん? 口?


「ブレスか!?」

「###!」


 口によく分からないエネルギーのようなものを貯めているのが見える。そして次の瞬間、口から漆黒のブレスが吐き出されたのだった。


「何処狙って……!?」


 ブレスを放った対象は俺ではなかった。

 少し離れた場所にある、そこそこ大きなビル……漆黒のブレスはそのビルに直撃し、そして飲み込んだと思えばそこに残ったのは大穴の開いたビルだった。そんな大穴から崩れ始め、一瞬にしてそこにあったビルが崩壊した。


「ち」


 避難は既に済んでいると思いたいが……俺はアンノウンを睨む。

 さっきまではビームばっかりだったが、今度はブレスを撃ってくるか……いや、ドラゴンもどきである時点でその攻撃方法がある可能性が高いって言うのは何となく分かっていたけど。


「今度は俺かい!」


 さっきのは何だったのか。

 まあいい……それどころではなく、あのブレスはやばそうだ。かすっただけでもかなり削られそうな感じがするし、被弾はしないようにしたいが……どういう軌道で飛んでくるんだ?

 ビームみたいに不規則だとちょっと怪しいな。


「ひえ!?」


 そうこう考えていてもあっちは待ってくれない。チャージが終わったのか、すぐさま漆黒のブレスを放たれそれを何とか避けるが、吐き出しながら首を動かして俺の移動先へと軌道を変えてくる。


「こ、こわあ」


 どうやらあのブレスは放った後も首を動かすことでずらしたりできるみたいだな。いや、普通は出来るか? そもそもブレスなんて吐くアンノウンなんて……と思ったけどそう言えば居たな。

 また撃ってくるかと思い警戒するが……撃ってくる気配はない。エネルギー見たいなやつが切れたか? まあそれはいいとして、今のうちにさっきからちょこちょこ下から攻撃してくるアンノウンを始末しないとな。


 当然、あいつも警戒しつつ……。


「アイスニードル!」


 数十発の氷の針を生み出し、アンノウンに降り注がせる。

 ドラゴンもどきと違い、そこまで硬いやつは居ないようで、次々と針に刺されていくアンノウン。そして数秒後に爆発が発生し、そしてアンノウンを消滅させる。


 これ使ってなかったけど結構強いかもしれない。

 いやまあ、今までの相手がアイシクル・シュートとかフリーズ・ショットで済んでいたから結局は使わず仕舞いだったんだけどね。


「##$%!」


 下のアンノウンを処理している間も、あにドラゴンもどきはビームやら何やらを撃ってきたけどそれらは何とか避けつつまずは邪魔なアンノウンを処理を終わらせた。


「さて。ようやく一対一でやれるな」

「##!」


 いや言ってなかったけど、こいつを相手してる間も下のやつらは地味に攻撃してきていたからな。当たり前だが。こいつよりは全然脅威ではなかったから避けるのは簡単だった。まあ、空飛ぶのがこっちに居なかったのが幸いか。


 ちらりと雫の方を見る。

 あっちには空飛ぶアンノウンも居るみたいだが、あっさりと雫に処理されているようだった。後なんか下が凄いことになってるけど……いや見なかったことにしよう。


「行くぞ!」

「##!」


 来いとでも言ってるようなドラゴンもどき……やはり知能か何かがありそうだな。再び俺とアンノウンは対峙するのだった。

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