48【開戦】
「###!!」
俺の放った氷の弾丸は全てアンノウンに命中する。奇襲と言うのもあり、向こうが避ける暇もなく弾丸に貫かれ、悲鳴のような咆哮をあげる。そして同時に魔法を放った雫についても、開幕相当数のアンノウンの処理に成功した。
「ここからが本番だね」
「ああ」
雫の言葉に頷く。
そう。奇襲は1回しか出来ないので、同じ手はもう使えない。ここからは奇襲ではなく普通に戦うことになる。相手のレベルは分からないが……あの奇襲程度では恐らく倒せてないだろう。手応えはあったが倒した感はなかったしな。
「Z%$&!」
ほらな。
あれだけのアイスバレットに貫かれたのにまだピンピンしてるようだ。でもダメージは通った感じはする。あのアンノウン都の戦いはこれからが本番ということだ。どんな能力を持ってるか分からないから十二分に注意しないとな。
そしてやっぱり案の定、アンノウンたちは魔法少女である俺と雫に気付けば優先的に狙って来る。取り巻きを相手しつつあいつを叩くのは骨が折れそうだな。
「まあいいさ」
取り敢えず、雫には取り巻きをメインに相手してもらうとして……俺も俺で全ての取り巻きが雫の方には行かないだろうしその対応もしないと。
「アイシクル・シュート!!」
ちょっとだけ魔力を多めに込めて放つ。氷の礫がマシンガンもしくはガトリングの如く発射される。狙った方向に真っすぐ飛んで行ったが途中でそれらを撃ち落とされてしまう。
「……そう簡単にはいかないか」
そう簡単にはいかないか……思ったことをそのまま口に出す。
さっきあいつが放ったのは何か黒いビームのようなものだ。薙ぎ払うように放ったそのビームが俺の飛ばしたアイシクル・シュートを尽く撃ち落とした。
「$#”!!」
「ちぃ!?」
俺がアイシクル・シュートを止めると、今度はここぞとばかりに羽無しドラゴンもどきがさっき、俺のアイシクル・シュートを落としたビームをこっちにも放ってくる。
「また少しだけかすったか」
今のビーム……予備動作が見えなかった。何とか避けられたけど、遠距離戦はちょっときついか? ここから色々撃っても撃ち落としそうだし。
「かといって近付いても色々と面倒だな」
それにあいつだけではなく、取り巻きも居る訳だしな。ビームを避けた後、再びそいつを見る。見た瞬間、再び黒いビームのようなものが迫ってきており、慌てて回避する。
「間隔短いのか?」
とは言え、今回は間にあったのでかすることなく避けられたが続けて撃って来るのは厄介だな。ドラゴンもどきな感じだし、多分ビーム以外にもブレスのようなものも使ってきそうな気はするが。
「フリーズ・ショット!」
遠距離に居てもビーム撃たれるだけなので、ジグザクに飛行しながらドラゴンもどきのアンノウンに近付く。流石に至近距離とかは危険だろうから、程良い感じの距離だ。
その間もビームを撃って来るけど、まあそんな連続で撃たれれば何となく分かってくる。予備動作みたいなものはないが、ビームの発射時、始点に魔力のようなものを毎度感じるから恐らくこれがビームの予兆だろうと思う。
それに魔法少女の身体能力を舐めてはいけない。下手をしなければ、発射されても一応避けられない訳ではない。ただそれでもやはりちょっときついものはあるが。真正面ならばいいが、横とか思いもよらない場所から撃たれたら恐らく被弾する。
程良い距離に近付き、すかさずフリーズ・ショットを放つ。ついさっきビームを撃った直後だからかすぐには撃てず、そこで俺の魔法が再びアンノウンにヒットする。
確かに発射間隔は短いがそれでも、即座に連射出来る訳では無さそうだ。大体3秒くらいの間隔はあるような感じ。
「###!!!」
フリーズ・ショットの効果は覚えているかな?
ヒットした場所の狭い範囲を凍り付かせるのである。今回のフリーズ・ショットはお腹のような場所にヒットしたみたいでそこが綺麗に凍っているものの、地味に解け始めている。
アブソリュート・ゼロのような永久凍結なんてことはないので解ける時は解ける。凍り付いたことに少し驚いている様子。
「今のうちに畳みかけておかなきゃな。アイスバレット!」
貫通力の高い氷の弾丸が放たれ、それはアンノウンを貫く。貫いた場所には小さな穴が開いており、ちょっとグロいかもしれない。
しかし、貫いたのはいいがそれでも全く効いてないとは言わないがちょっと微妙なダメージかも? でもってそれだけではなく、空いた部分がまた塞がり始める。
「再生能力的なやつもある感じか?」
よく分からないが。
ただバリアのようなものはないみたいで、攻撃は当たれば一応そのままダメージになる感じかな? でもそれなりに硬そうな感じはするが。
「……」
さて、どうやるべきか。俺は羽無しドラゴンもどきの動きに注意しながら考えるのだった。
▽▽▽
「向こうはもう始まったみたいだね。こっちも……アイスロック!」
私が魔法のキーワードを唱えれば、空中にかなり大きな氷塊が姿を現す。そのまま私はステッキを軽く振り下ろせば、その氷塊も落下し、そして下に居るアンノウンを巻き込み地面に着弾する。地面に到達したところで、ハートの形をした氷塊は砕け、下敷きになったアンノウンも消滅する。
「うん。あまり鈍ってなくて良かったよ」
「……兄妹揃ってえぐい魔法使うわねえ」
「え? そうかな?」
魔法を見て何かフルールに引かれ気味になってるけど……え? おかしくないよね。まあいいや……アンノウンを倒せればどんな魔法でも別にいいんだし。
お姉ちゃんは向こうに居る羽無しドラゴンもどきのアンノウンを相手しているので私の役目は、その取り巻きを出来る限り処理すること。無限湧き……って感じはしないから倒せばいずれは居なくなるはず。
取り巻きのアンノウンはそこまで強くない感じかな? レベルは3か4だとは思うけど……ただ個々のアンノウンは強くはないけど数がそれなりに居るし、何なら地上だけではない訳で。
「アイスバレット!」
飛行系のアンノウンも居るので空が安全とは言えない訳だよ。
鳥のような見た目をしたアンノウンが私に向かって突進してきたので、それを回避し氷の弾丸を放つ。この距離なので私の弾丸は問題なくアンノウンにヒットし貫通する。貫通した弾丸後ろに控えていた1体のアンノウンも貫き、2体とも消滅する。
「雫、下から攻撃が来るわよ!」
「うん!」
そんな感じで空のアンノウン相手して居れば今度は地上に居るアンノウンが攻撃してくる。地上にも空中にも居るのは意外と厄介だよね。
下から飛んできたのは針のようなもの。いや……あれはただの針じゃないかも。
「毒針かぁ」
「麻痺針の可能性もあるわね」
「麻痺の方がまだマシかな?」
「どっちもどっちでしょ。個人的には麻痺の方が危ない気はするけど」
「確かに」
そんなやり取りをしつつ、針を撃ってきたアンノウンを捕捉する。
「あれかな」
何か蠍みたいな見た目をしてるアンノウンだ。それが数体下に待機しており、こちらを狙っていたので多分間違いないかな。
「アイスロック」
次の針を撃ちそうな感じがしたので、素早くハート型の氷塊を生み出し落とす。避けて被弾を免れたアンノウンも居るが、取り敢えず何体かまとめて処理する事が出来たかな?
え? 何でハート型なのかって? それは聞かれても私も分からないよ。アイスロックの魔法を使うと形が勝手にハードになるんだし……形変えられる感じもしなかったからそのまま使ってる感じだよ。5年前もね。
「アイシクル・スピア!」
それはそうとして、まだあの蠍のようなアンノウンが生き残っているので続けて攻撃する。毒だか麻痺だか分からないけど、ああいうのは厄介なので早めに処理するべき。
そんな訳で唱えた魔法……アイシクル・スピアを発動させれば私の周りに10本ほどの氷槍が浮かぶ。そしてその瞬間、再び針のようなものを放ってきたのでそれを氷槍の一本が移動し弾く。
「それっ!」
お返しと言わんばかりに私はその針を撃ってきた蠍のようなアンノウンの一体に目掛けて氷槍を飛ばす。避けようとしたみたいだがこちらの方が早く、あっさりと氷槍に貫かれて消滅する。
魔法で生み出した氷槍を次へ次へとアンノウンに飛ばしていく。これには追尾性能はないので真っすぐに飛んでいくけど、飛んで行く速度は早いので当てやすいんじゃないかな。あくまで私感覚だけど。
それにそんなすばしっこいアンノウンではないしね。
「あ、氷槍切れちゃったか」
10本しか生成してないし、そりゃあ使えば減るのは当たり前なんだけどね。
「……なんてね」
氷槍が切れて攻撃が止まったからか、アンノウンも攻撃をしようと動き出すが……残念。
「確かに氷槍は切れたけどね。それじゃあ、逝こっか」
にっこりと笑い、ステッキを振り下ろす。
「###!?」
刹那。
空中に浮いている数十数百本以上の氷の槍が一斉に降り注ぐ。範囲内に居る地上のアンノウン、空中のアンノウン……全てを容赦なく貫き、そして消滅させるのだった。
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