44【類似】
「え? 避難所が襲撃された!?」
移動している途中、チェリーレッドの声が空に響く。それを聞いたアズールフラワーも慌ててチェリーレッドの近くまで移動する。
「避難所……っ!」
その話を聞いて俺ははっとなる。
魔法省のトップである星空月夜……からの依頼と言うか話をを聞きどうせ避難所方面に用事があったので一緒に行くくらいは別に問題ないと返し、件の2人と一緒に移動をしていたのだが……。
「避難所って言うと……あそこくらいだよな。ごめん、2人とも、ちょっと急用が出来た」
「えっ……ってちょっ!?」
言葉を最後まで聞くことなく、俺は背中の羽に魔力を込めてその場から立ち去る。あの避難所くらいしかこの地域にはないはず……というより、そもそも避難所に行くことなんて今まではなかった訳だしな。
というのもレベル3以下のアンノウンしか出現しなかったから避難する前に魔法少女が駆け付けては処理してるので、避難所と言うところに行くことはあまりなかった訳だ。
それにぶっちゃけ避難所があってもその避難中に襲われる可能性だったる訳だし、正直その場に居た方が安全だったりすることも珍しくない。
基本的には魔法少女がアンノウンの気を引き付け、一般人を逃すと言う形なのだが……気を引き付ける魔法少女の攻撃で撃沈することが多いのだ。
ただこの地域は魔法少女が居ないので駆け付ける速度がちょっと遅い。だからまあ、最悪の場合を考えて避難するのも身をも守る一つの手段である。魔法少女が居なくとも自衛隊や警察官、救急隊員とかは居る訳だしな。
と言っても魔法少女以外の攻撃は微妙なのだが。
アンノウンはどうも魔力に反応するみたいで、近くに魔法少女がやって来るとそっちを攻撃することが多い。一般人に対しても攻撃する個体としない個体があったりもするみたいだ。
未だに謎のままの生命体だが……一応、習性や特性等の特徴は日々研究されている。まだ解明は出来ないがそれでも一応は進んでいるということだ。
まあ、進んでなかったらUEアラートなんてものは作れないだろうしな。
「それよりも、だ」
避難所が攻撃されたってことは、少なくとも無傷ということはないだろう。下手をすれば死者も出ているかもしれない。だけど、それ以前に……。
「雫……」
そうだ。
雫も避難しているはずなので、居るとすればその避難所のはず。だからこそ俺は焦っている。巻き込まれていたら……と考えてしまう。
「見えてきた!」
避難所があるはずの場所が視界に映り込み、速度を落とす。入り口らしき場所にはいくつかの人影が見え、それらは近付くにつれてはっきりと見えてくるようになる。
救急隊員であろう何人もの人たちが担架を運んだり、レスキュー隊だろうか? 工具をもってあちこちを慌ただしく走り回っている光景が見える。自衛隊のトラックらしきものや、ヘリコプターまで飛んでいるから何かがあったのは間違いないと言うのは一発で分かる。
避難所の建物はかなり頑丈に作られていたはず。それにあれはただの外側なだけで、この避難所の本体は地下にあるのだ。もちろん、地上にある建物もかなり頑丈に作られているし、何なら色々と設備が整っていたりしてる。
地下も地上もどっちもちゃんと避難所としての機能が備わっているけど、さっきも言ったと思うが本体は地下である。地下の方が広かったりする。
だからこそ、それを見て驚く。
「……」
避難所の地上の建物は、頑丈だったはずなのに半壊していたのだから。いや、半壊で済ませただけでもやはり頑丈なのだろう。俺は再び速度を上げて近付くのだった。
▽▽▽
「あー行っちゃった……」
『避難所は攻撃されたけど、待機していた魔法少女や自衛隊たちのお陰で死者は居ないって言うのが聞こえてなかったみたいね』
さっきまでそこに居たはずの白い魔法少女ことフリーズ・フルールの姿はもう見えなくなってしまっていた。通信が聞こえていたんだろうけど、最後まで聞かずに行っちゃったな……。
「何かあるんでしょうか?」
『何かあると言うか、大事な人とか大切な人が居たのかもしれないわね。その人が避難所に避難しているからこそ、これを聞いて……』
「何か凄い焦っていた気がします」
魔法少女フリーズ・フルール。
ようやく今になって名前が判明した謎多き野良の魔法少女の名前。見た感じでは普通の女の子……な感じだったなあ。ただ時々、口調が何か変わったりするのがあったけど……。
何かを考えていると言うのは分かるんだけど……なんていうのかな? 底が見えないと言うか、よく分からない感じ。使う魔法は月夜さんとかが言っていた通り氷属性なのははっきりと分かったかな。
あの子の戦闘を見れば嫌でも氷って言うのが分かる。そしてその姿が何と言うか……白一色な天使と言った感じかな? 白だけって訳ではないけど、背中には真っ白な羽があったし、頭上にもリングが浮かんでいた。
白銀の髪をツーサイドアップに結ばれていて、服自体は何か私たちに少し似ているような感じ。魔法少女の服って人によって違うみたいなんだけど、基本的な構造は一緒な感じみたい。
服と言っても魔力によって形成された魔力装甲と呼ばれるものになるんだけどね。
『それにしてもやっぱり彼女は氷属性の魔法少女のようね』
「実際戦ったところも見てるけど、どう見てもあれは氷としか言えないかなあ」
「ですね」
氷の礫を飛ばしたり、空から降り注がせたり……爆発を起こしたりと、攻撃的な魔法が多い感じがする。でも私たちを助けてくれた時にはバリアみたいなものも展開してたよね?
『ええ聞いたけど、間違いなさそうね。アイス・メロディーを含めて2人目の氷属性、ね。しかもアイス・メロディーと同じく野良』
「アイス・メロディーについては話くらいしか聞いたことないのでよく分かりません」
『そうよね。あなたたちはまだその時は魔法少女じゃなかったものね』
月夜さんの言葉に頷く。
アイス・メロディーと言うのは5年前に東京を凍らせた野良の魔法少女のこと。私はまだ当時は魔法少女でもなかったし一般人だったのでまず関わりがないので話とかで聞くくらいだ。
『それに……似ているのよね』
「え?」
『彼女……フリーズ・フルールと5年前のアイス・メロディーの見た目がね。同じ白が基本色な感じだったし、羽もあったしリングも浮いていた』
「そうなんですね……」
似ていると言われても私たちは実際そのアイス・メロディーを見た訳ではないのでピンと来ないけども。
『あ、ごめんなさいね。あなたたちは知らないのに私が勝手に話してしまって』
「いえ、それはいいんですけどね……アイス・メロディーってどんな魔法少女だったんです?」
首都を凍らせた野良の魔法少女……とだけ聞いている。あとは氷属性だって言うことも。
『うーん。正直、私が直接話したことはないのよね。その時の魔法少女が時々出会っては話していたみたいだけど』
「あ。そうなんですね」
『聞いた感じではどこにでも居るような女の子……みたいな感じのようね。野良で活動している理由は教えてくれなかったみたいね』
「なるほど」
『会ったことのある魔法少女だって、毎回会えた訳ではないみたいだしね。はっきりとしてるのは……彼女、フリーズ・フルールに近い見た目をしていて氷属性の魔法を使う魔法少女ね』
「そんな似てるんですか?」
『ええ。髪型は違うみたいだけど、髪の色や瞳の色……胸元にある雪の結晶のような装飾品も似てるわね……正直、姉妹って言っても通じそうよ』
「姉妹……ですか」
姉妹で魔法少女になった子は確かに何人かは居るんだよね。そこまで多いって感じではないけど……それで姉妹の魔法少女の特徴は同じような似た魔法を扱うと言ったところで、属性もほぼ同じらしい。
『使う魔法についても聞いた限りでは似ているものがあるわ』
「……氷属性で見た目にどこか似ていて……同じような魔法を使うっていうのは姉妹の魔法少女の特徴に一致してるね」
『ええ。まあ、関係性があるかは分からないけどね』
ただ似ているだけって言う可能性も0じゃないしね。
『取り敢えず……念の為、避難所の方にも寄ってくれるかしら。コロコロ変わって申し訳ないのだけど』
「了解です」
まあ、実際行こうとしていた場所も避難所のすぐ近くだし別に無駄って感じではないよね。そんな訳で私とアズールフラワーは通り道でもある避難所に行ってから目的地に向かうのだった。
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