41【気配】
「あなたは何者なんでしょうか? 野良の魔法少女だって言うことは分かりますが」
無駄にでかいアンノウンを倒してひと段落着いたところで、俺は青い子の方……アズールフラワーと言うらしい、に問いかけられる。何者って言われてもなあ。
「ただの通りすがりだけど」
「……」
「いや、そんな目で見られても……」
何者と言われもただの通りすがりの魔法少女としか言えないよな。実際そうだし……違うことと言えば男なのに魔法少女になっているってところだろうか。流石にそれは言えないと言うか言いたくない。
それに……変身解いても今の俺って女になってるのでどうしようもない。
「そうですか、何も言えないってところですかね」
「まあ、そんなところ?」
勝手に納得してくれたらしい。でも実際、真面目な話、通りすがりで間違いないんだよなあ……フルールがこの2人のことを見つけたから俺が駆け付けた訳だし。
「質問を変えます。えっと……あなたは氷属性なのですか?」
「ん? そうだけど」
「!」
別の属性ぐらいなら教えてもいいだろうともって普通に答えたのだが、何か様子がおかしい。というか驚いていると言うか……そんな感じの表情をしてる。赤い子……チェリーレッドと言うらしい、の方も同じ感じ。
「何かおかしいこと言った?」
「い、いえ……驚いただけです」
「?」
それは分かる。
しかしなぜ驚いたのか……氷属性が珍しいのかね。
「……」
何やら考え込んでいるアズールフラワー。そんな考えこむほど? っていうか、こんなところでじっとしている訳にも行かないだろう。まだアンノウンは居るんだし。
「アズールフラワー、色々気になるのは私も同じだけど今はアンノウンだよ! まだまだ居るんだから」
正に俺の思っていたようなことを言うチェリーレッド。
「それもそうですね。えっと最後に名前を聞いてもいいでしょうか?」
「名前ねえ」
そう言えば向こうは名乗ってくれたのにこっちは名乗ってなかったな。それは確かに礼儀に反するか。名前なら大丈夫かなね? 変に色々探られるのは俺の精神衛生上、よろしくないのだが……。
「フリーズ・フルールだよ」
「フリーズ・フルール……」
でもまあ、名前だけなら問題ないか。
向こうも向こうでそんな無駄に探ることはしないだろうし……野良の魔法少女相手にさ。断言は出来ないけど実際さ、正規(魔法省所属)の魔法少女でもない魔法少女を無駄に探るなんて時間の無駄だし労力の無駄だよな。
「あと……」
「?」
「前もって言っておくけど、お……私は魔法省に所属する気はないよ」
「……そうですか」
何か勧誘のような言葉が出てきそうだったので前もって言っておく。
ってか危ない危ない。いつも通りの口調で返すところだった。雫とかフルール相手ならいいが、見知らぬ人に対しては流石にあの話し方は変に思われそうだしな。それに雫にも言われてるし。
俺なんて使ったら俺が男であるということも推測されてしまう可能性があるしな。いや、実際男なんだけどな……。
▽▽▽
「!?」
「お、おいどうした、フルール」
突然、周り見回し始めるフルールを見て疑問に思う。近くにはまだチェリーレッドとアズールフラワーが居るのでフルールにだけ聞こえるくらいの声で話しかける……次の瞬間だった。
「っ!」
「!?」
「な、これは?!」
俺たちは一斉にそれを感じ、フルールのように周りを見回す。しかし、周りを見ても特に何もない。
「アイスバレット」
いや、何かあった。
鳥型の小型アンノウンが攻撃してきたのですかさずに魔法を放つ。さっきもちらっと使ったと思うが、このアイスバレットと言う魔法は見ての通り氷の弾丸を放つ魔法だ。
アイシクル・シュートと似ているがこっちは単発型であり、何よりその弾丸の貫通力が高い。まあ、アイシクル・シュートもやろうと思えば単発発射も可能なのだが。
大きさは銃弾より二倍くらいの大きさだけど、これは魔力を込めることによって大きくも出来たり小さくできたりもする。そして貫通力を更に上げることもできる。
ただしこれはアイシクル・シュートの系統であり、追尾性能はないので狙って撃つ必要がある。と言っても弾速がアイシクル・シュートよりも更に速いから当てやすいと思う。
まあ……アイシクル・シュートの方は単発ではなくマシンガンとかガトリングとかそんな感じに連射して撃つのが基本の魔法なので単発のこれと比べるのは意味がないのだが。
後こっちは結構自由度が高い。
この魔法は生成→待機→発射の3工程で放つ魔法なのだが、この生成のところで複数生成してから一斉発射って言うことも可能なのである。
まあ要するに予め氷の弾丸を幾つか生成して後で連続発射って言うのが出来るってことかな。一々一発ずつ生成して撃つよりは当たり前だが短いスパンで放てる訳だ。
フリーズ・ショットは出来なかった。あれはもう発射と生成が一緒なので魔法のキーワードを紡いだ瞬間に放たれるのでアイスバレット見たいには使えない。連続で唱えて連射することは出来るけどな。
というか……フルール曰く、魔法は全部使い方次第って言ってたので、どの魔法も使い方次第では特殊な使い方も出来るってことだろうな。一応この予め生成しておくって言うのは裏技的な奴に入るのかな。
「まあそれはいいとして」
さっきのあれは何だったんだ? とてつもない力と言うか……やばそうな気配を感じた。見た感じでは俺だけではなくフルールや2人も感じていたように見える。
「……今のは何だったのかな? 何か凄い嫌な予感がするよー」
「チェリーレッドも感じましたか。ええ、あれは何かこの世のものとは思えない力……のような感じでした」
嫌な予感がすると言うのには同感だ。そしてこの世のものとは思えない何かと言うのにも同意をせざる得ない。本当にそんな感じのものだったからだ。
「フルール……」
「ええ……まだ確信は出来ないけれど」
今のあの気配。
恐らく……どこかにアンノウンが居る。え? アンノウンならその辺に今も居るだろって? それはそうだが、そうではなく……圧倒的に強力な個体が近くに居るということを言っている。
レベルは分からない。だけど、レベル5……6の可能性もある。あれだけの気配だ……ただのアンノウンではないのは間違いないだろう。
だけど、あれを感じたのは一瞬だけで今は気配が消えてしまっているのでどこに居るのかまでは分からない。近くに居るのは確かだろうけど、気配が消えたってことは遠くに行ったかそれとも……。
「気配を消せるとか?」
それは流石にないか。
アンノウンは出現する時に空間を歪めるらしいし嫌でも感知することが出来るはず。大体、警報みたいな感知して知らせる機械がある訳だし、魔法少女なら感知してもおかしくはない。
魔法少女よりも警報の方が感知するのが早いってところじゃないかね。そもそも魔法少女に変身してなきゃそう言うのは感じ取れないみたいだし……通常時は皆普通の生活を送っているはずだ。
「取り敢えずはこの周囲に居るアンノウンの対処だな」
今のところ、あの気配は感じ取れない。
でも普通のアンノウンについてはまだ出現しているのでまずはこいつらを始末しないとな……ただ近くに居るのであれば、あの気配を持つ何かがいつ襲って来るか分からない。十分に警戒する必要がある。
というかアンノウンの出現が今までと比べて突発的というか、場所を選ばないと言うか……いやそもそもアンノウンのはランダムな場所に出て来る訳だから別におかしくはないのか?
「でもなあ……数が多いよな」
今までこの地域にアンノウンが出現するのはちまちまあったけど、この数は初めてじゃないだろうか。都会でもこんな出現しないと思うぞ。
まあいい……取り敢えずはこいつらの処理だな。あとは……雫も気になるところ。無事に避難できているだろうか? 様子を見に行きたいけど何処だろうな。
でもまあ……最悪、雫なら変身してアンノウンを倒しそうだな。目立つと言うか有名な存在ではあるけど、やばい時はきっと変身する。雫の性格上な。
別にそれを咎めるなんてことはしない。その時はその時で対応してくれればいい。
「よし……」
ここを処理したらちょっと雫を探しに行くか。
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