13【魔法】
「アイシクル・シュート!」
握っているステッキの先端部分に魔法陣が現れ、複数の氷の礫が発射される。それぞれを目の前にある的に当てていく。この魔法があの時、魔法少女になった時に最初に使った魔法である。
この魔法は複数の氷の礫を放つ魔法で、それぞれの礫の飛ばす方向もやろうと思えば変えられる。マシンガンのように連続射出も可能である。
単体に連射のごとく放っても良いし、小刻みに方向を変えたりするのも良いだろう。ただしこの魔法に追尾性能はないので、動く敵相手にはちょっと当てにくいかもしれない。偏差射撃というものが必要になる。
「結構当てるわね」
「何となく使い方とか分かるんだよな」
まあ、そもそも使える魔法自体あの時に全て覚えたと言うか……頭の中に入ってきているのだが。全部って言うとかなり数が多い。だから多分全部使うことは出来ないだろうな、時間的に。
さて、今の俺はどこに居るのかと言えば……まあ、フェアリーガーデンにあるフルールの家である。フルールの家はなんというか思ったより大きかった。
今の俺の身体はフルールと同じくらいになっているので、その大きさで大きいと感じるということは……まあこのフェアリーガーデンでは大きい方に入るんじゃないかと思う。
お金持ちとかそういう類なのかな? まあいいか。
今日ショッピングモールでナンパ男を見かけた時に、そう言えばフルールが自分の正体を知ったら皆逃げていったとか言っていたけど……。それと関係がある感じかね。
流石にプライベートな内容だと思ったし、俺自身もまだフルールとはそこまでの仲ではないし聞くことはしなかったのだが。まあ気になるのは気になるけど、フルールが教えてくれるまでは何も聞かないほうが良いだろう。
「フリーズ・ショット!」
それはさておき。
俺は”アイシクル・シュート”に続いて今度はまた同じように変身した時に使った魔法のもう一つの方を放ってみる。”アイシクル・シュート”がマシンガンと言うなら”フリーズ・ショット”はショットガンだろうか?
この魔法は”アイシクル・シュート”と異なり、単発型の魔法だ。一発一発ずつ放つタイプであるが、こちらの魔法には追尾性能がある。しかも結構精度が良く、弾速もそれなりに早い。
”アイシクル・シュート”の氷の礫よりも、2倍くらい礫が大きい。
で、肝心なこの魔法の効果なのだがさっきも言ったように追尾性があり、単発型の魔法となる。そして更に着弾地点から狭い範囲を凍結させる効果がある。これは狼型のアンノウンに使った時に見たと思う。
凍結させると言っても範囲は結構狭くて、正確な数値は分からないけど着弾地点を起点に半径1メートルくらいの広さだろうか。その範囲を同時に凍結させるようだ。
単体を凍結させると考えれば結構強いと思う。相手の動きを封じられるというのは大きなメリットである。それに単発型とは言ったけど、連続して撃てば連射できなくもない。
まあ、追尾性能があるから連射する必要はあまりないけどな。
「この魔法も結構強いよなあ」
「狭い範囲ではあるけど、凍らせられるのは確かに強いわね」
使っている相手は今は的なのでダメージ自体はどうなのかは分からないが、狼型のアンノウンを凍らせた時に少ししたら氷ごとアンノウンも砕けていたのでそれなりのダメージはあるのかな?
と言うか今更だけど、氷ごと中身がアンノウンとは言え砕けるってかなりグロいと言うか……いや何でもない。
「アイシクル・レイン!」
続けて使ったのは今回初めて使った魔法”アイシクル・レイン”である。
これを唱えると空中に水色の魔法陣が生まれ、そしてそこから無数の氷が雨のごとく降り注ぎだす。アイシクル・シュートの縦方向バージョンなイメージだが、ちょっとこれは違う。
この魔法は固定設置型の魔法で、一度発動させるとその場所から移動させることは出来ない。一定の氷の雨を降り注いだ後、勝手に消滅するような感じだ。
更に言うとこの魔法は範囲を調節することも可能であり、設置する場所も自由である。一度場所を決めると移動は出来ないが、もう一つ生み出して別の場所に設置するということは可能っぽい。
使い方次第では結構強そうだ。
「これもまた何かに使えそうだな……」
そのまま一つの魔法を何度か使った後、次の魔法へ移動する。……全ての魔法は流石に使い切れないだろうけど、取り敢えず順当に使っていくことにするのだった。
□□□
「今何時だ?」
「フェアリーガーデンでの時間は19時くらいね。地球との差もあまりないはずだから向こうでも恐らく19時頃だ思うわ」
「19時か……」
大分時間をかけてしまっただろうか?
確かこのフェアリーガーデンに来たのって何時頃だっけ? 自分の部屋からフルールが転移だか何だか分からないけど、そんな魔法で瞬時に移動したから、移動時間自体はかかってなさそうだが。
家に帰ってきた時間が15時くらいだったかな。
その後、移動したから……大体4時間くらい? そう考えると思ったよりかかってはいなかったな。それでも4時間近く魔法に没頭していたという証拠でもあるけど。
「どう? コツとか掴めたかしら」
「まあ、それなりにはね」
どの魔法もやはりそれぞれの癖があったがそれでも、そこまで苦労せずに使えたと思う。ただこれ全てを実践で使うかどうかは分からないが……。
でだ。
やはり予想通りで全ては使い切れなかった。時間的にという意味もあるが、他にも強力過ぎて使えないと言ったようなものもあった訳なのだ。
かなりの広範囲に影響を及ぼすようなマップ兵器と言わざるを得ないやつまであった訳だしな。それぞれの魔法の情報は頭の中に入っているので、大体こんな感じと言ったイメージは出来るのだ。
とは言え、実際使わないと細かいところとかまでは流石に分からないのだが。取り敢えず、そんな感じのやや危険そうなものは除外して使っていた感じ。
で、そんな安除外した魔法の中に明らかにヤバそうなやつが一つ存在していた。情報だけで見てもかなりヤバそうだ。
「なんか凄いヤバい魔法があったなあ」
「ヤバい魔法? 即死させる魔法とかかしら」
「いや違うけど……ってか、即死させる魔法なんてあるの!?」
「あるっちゃあるわよ。ただどういう訳か失敗が多いらしいけど。なんか一定の確率で成功するみたいだけれどね」
「何その有名な某ゲームに出てくる○キみたいな魔法」
と言うか魔法に確率とかあるのかよ。
「その魔法だけが特殊なだけね。まあ、そもそもこの魔法は消費する魔力量も馬鹿ならないけど」
「いやそれでも一定の確率で即死させるとか怖い……」
「大丈夫よ。この魔法はフェアリーガーデンでは禁忌に指定されているから使ったら失敗でも捕まるわね」
「あー禁忌とかあるんだ」
「まあね。そんな魔法が飛び交う無法地帯じゃないわよ流石に」
「いやそこまでは言ってないと言うか考えてないけど」
魔法にもちゃんとしたルールがあるらしい。それもそうか……。
「それで、ヤバい魔法っていうのは?」
「うーんとね……”アブソリュート・ゼロ”っていう魔法なんだけど」
「アブソリュート・ゼロ……」
何か何処かで聞いたことあるんだよな。何処だっけ?
この”アブソリュート・ゼロ”の効果というのがかなりやばめのもので、ありとあらゆるものを凍らせてしまう空間を生み出す魔法みたいだった。
しかもその範囲も指定できるという相当な代物だ。
ただ、この魔法……どうやら自分が居る場所を起点にするしかないみたいで場所の指定は出来ないみたい。実際使わないとわからないけど、流石にこれはヤバそうなので使えない。
「あ、そうだ! 思い出した」
「どうしたのよ、急に声を上げて。と言うか何を思い出したって?」
「いや、アブソリュート・ゼロって名前何処かで聞いたことあるなって思って。今思い出したんだよ。夢の中に出てきた魔法少女が最後に使っていた魔法だ」
そうだよ、今思い出した。
あの妙にリアルで今も記憶に残っているあの魔法の中で、最後にあの子が使っていた魔法だ。いや夢の中の話なんだけどな。
「ん? 夢の中の魔法少女?」
「そう言えばフルールには言ってなかったな」
夢の中のことだし、気になるっちゃ気になるけどわざわざ夢の中の出来事を他人に聞くっていうのもおかしな話だしな。夢は夢なのだ。
とは言え、一応夢のことをフルールに話してみるか……もしかしたら何か分かるかもしれないし、分からないかもしれないが。
そんな訳で俺はその魔法少女が出てきた夢についてフルールに説明するのだった。
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