06【魔法少女の”属性”】


「まず、奏が魔法少女になった理由は、魔法少女としての資質があったからよ」

「資質……いや待て、男なのに魔法少女っておかしいだろ」

「……別に男が魔法少女になれないなんて話ないでしょ?」

「そ、それは確かにそうだが……」


 魔法少女になるのは10代の少女が多い。これは既にずっと前から存在する統計データからも読み取れる。少女……つまり女性がなりやすいという事になる。

 結構稀な例ではあるが、20代でも魔法少女になったデータもあるようだ。ここまでで見た通り、ほとんどの魔法少女の例が女性に集中している訳だ。


 過去から現在にかけて、男性が魔法少女になると言った例は存在しない。存在しないのだが、男性が魔法少女になれないという根拠等も存在しないのだ。

 だから男性が魔法少女になるという可能性もあるっちゃある訳だけど、こう言った傾向もあって男性は魔法少女にはなれないと言った風に浸透している。


「魔法少女になれるかなれないか……私たちも魔法少女については分からない事が多いのよね。こっちでは普通に魔法を扱う訳だから」

「そうなのか……」


 妖精でも魔法少女については分からないのか。

 でもよく考えれば、フェアリーガーデンと地球は隣接はしていたけど、世界の壁があったから互いに干渉する事はなかった訳で、お互い違う文明を築いてきている。互いが交流する事もなかったし、他の世界の事なんて知らないのが普通だよな。


「ただ……地球で最初に生まれた魔法少女については私たち妖精が干渉していたわ」

「最初の魔法少女か……」


 15年前のアンノウンが初めて出現した日と同じ日に登場した魔法少女。彼女たちのお陰で被害ゼロという事はなかったものの被害が拡大する事を防げた訳だ。


「始まりの魔法少女」

「ここではそう言われているみたいね」


 前にも言った気がするが、始まりの魔法少女と言うのは15年前にアンノウン出現と同時に現れた最初の魔法少女である。日本では3人居たのだが、そのうちの一人は首都凍結の事件の際に死亡とされている。


 ……されている、と曖昧なのは実際に遺体を確認した訳ではないからだ。

 死亡とされているものの、実質行方不明状態である。もしかすると首都凍結に巻き込まれ、絶対零度の中で凍り付いてしまっている可能性がある。しかし、それを確認する方法は今現在ではない。


 これも前に言ったと思うが、旧首都である東京は絶対零度の世界と化している。魔法少女を除き、例外なく近付けば凍り付くという危険な地域となっているのだ。

 魔法少女も、無制限にずっと居られる訳ではなく、魔力装甲がなくなってしまえばたちまち、絶対零度の環境に晒されそのまま凍結してしまうだろう。


 東京の調査をしているものの、先ほど言った死亡扱いの始まりの魔法少女の一人はまだ発見されていない。


 まあ、そんな訳で現在生きている始まりの魔法少女は2人。そして1人は魔法省のトップに、もう1人もまた魔法省の中で働いている。


「もしかしてフルールは始まりの魔法少女を誕生させた妖精?」

「いえ、私は違うわよ。私がこっちの世界に来たのは10年前だから」

「それだと始まりの魔法少女と時間軸は合わないな」


 てっきり、始まりの魔法少女と関わりがあったのかと思ったが違ったようだ。


「いつでも帰れるし、こっちに行ったりフェアリーガーデンに戻ったりしながら過ごしていたわね」

「10年前から居たって事は、フルールも魔法少女に干渉した事とかあったのか?」

「そうね。2人くらいかしら……2人とも適性属性は違ったけど、それなりに強い魔法少女だと思うわ。ただ私が大々的に姿を現して何だかんだした訳じゃないけども」

「? って事はこうやって対面するのは俺が初めてって事になるのか?」

「そうなるわね。目の前に逸材が居るんだもの、見逃す訳にはいかないでしょ? それに奏だってピンチだったじゃない」

「ああそうだな……その点については助かったよ」


 氷の壁がなかったら今頃俺は死んでいただろう。魔法少女になったのは予想外だったが……。 


「話が逸れた気がするけど、奏が魔法少女になったのは資質があったから。青い光を見たわよね?」

「見た」

「あれは、覚醒する前兆みたいなものよ。普通なら無意識に覚醒手順を踏むけど、今回は私が干渉したのもあって無意識と言う感じにはならなかったけれど」

「無意識って、それはそれで怖いなおい……」

「覚醒する時なんてそんなものよ」

「……そんなものなのかね」


 まあ、今なんやかんや言っても俺は既に魔法少女として覚醒してしまっているので何も変わらないのだが。


「それで、さっきも言ったと思うけど、奏は氷に対して非常に高い適性があるわ。その姿が証拠ね」

「この魔法少女の姿が?」

「ええ。今の自分を見て何か思った事はなかった?」

「色々とあるけど、一番印象が大きいのは天使かな。羽に頭上にリング……」


 色々言いたい事はあるものの、今フルールが言っている思った事と言うのはそういう事ではないだろう。


「そうそれ。天使と言えば神の使者とも言われているわよね? そんな存在に近い形に変身している。それはつまり……神の使者たる天使に匹敵する力があるという事」

「え、そうなの?」

「ええ。とは言え、全てを力を扱いきれるかはあなた次第だけど」


 天使のような見た目になっているのはそう言った要因があるのか。いや、よく分からないけど……。


 でもそう言えば、他の魔法少女……データが公開されている子になるけどそれらを一通り見た感じでは確かに、こんなあからさまな姿になっている子は居なかった。

 羽のようなものがある魔法少女は結構居たけど、今の俺のように天使の羽みたいなものと同じ羽の子は居ない。


「しかし、氷かあ」

「男性でしかも魔力量も多く、氷に非常に高い適性がある。これは真面目に見た事がないわ」

「うーん。あまりよく分からん」

「まあそうでしょうね。……ただ以前、奏みたいに氷に高い適性を持った魔法少女居たような気がするんだけど……思い出せないわね」

「魔法少女は結構数が居るし、そんな魔法少女も居るんじゃないのか?」

「それはそうなんだけどね。ただ高い適性を持つ魔法少女って思ったより多くないのよね」


 多くないのか。

 でも、妖精が干渉してない魔法少女でもアンノウンに普通に対抗できている訳だし、よく分からんな。いや、どの魔法少女が妖精の干渉を受けているのか、受けてないのかなんて流石にそこまでは分からないが。


 フルールの話では基本的に妖精の干渉を受けた魔法少女は、その事を周りの人に伝える事はないらしい。妖精自身もそう言う風に言っているようだ。


 まあ、扱いが変わったりとか何かあったらそれは嫌だろうし。

 それに、妖精が一人の魔法少女に長く付き添うという例はほんの一握りだそうで。大体は覚醒時に知らん顔で干渉するとかそんな感じだそう。


 だから俺のように、こうやって妖精と直接対面するって事はかなりレアなケース。


「思い出せない事を思い出すのはちょっと無駄ね。この話は一旦忘れて頂戴」

「了解」

「話を戻すけど、魔法には種類があるのよ」

「種類?」


 色んな魔法があるって言うのは分かるし、魔法少女たちはそれぞれ使う魔法も同じものもあるけど異なるものもある事から、色んな種類があるのは簡単に想像できる。


「まずは基本的な所にあるけど、属性ね」

「属性、か」

「そう。あなたの場合は氷となるわね。主な属性としては火、水、氷、風、雷、土、光、闇、無の9つかしらね」

「氷と水って別なのか……」


 これは予想外。

 いやまあ、水と氷が一緒っていうのはよくある魔法が登場する異世界ファンタジーとかのお話での話なんだから、現実と違うのは可笑しくないのだが。


「水と氷は確かに同じようなもの、地球で言うと液体か固体かの違いになるけど別よ。元の物質が一緒でも別物だし。水は水を、氷は氷をと言った感じね。水から氷の礫なんて作れないでしょ?」

「まあ確かに」


 凍らすという手順が必要だ。

 凍らす……これは氷属性に該当するようで、水属性では凍らせる事は出来ない……らしい。


「細かく考える必要はないわ。別は別って考えれば簡単よ」

「それもそうか」


 ともかく、水と氷は別の属性と。


「それで、奏はこの9つの属性のうち、氷に対しての適性が非常に高い」

「それは分かったが……」


 しかし氷か。もしかして俺って結構冷たいとか? いや……うん、どうだろうか。


 取り敢えず、氷属性ってのは分かった。というより、最初自分の使える魔法を自分に問いかけた際に使える魔法は多分、頭の中にある。何ともまあ不思議ではあるけど。

 それもあったので、俺が使える魔法が氷系とかなのは何となく分かってた。


 ……気にしない事するか。

 そんなこんな考えながらも、フルールの話を聞くのだった。



 

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