第2話 父と子

父さんは昔ここで宇宙人に出会ったって。でも周りは宇宙人はいないって言うし、子供から大人になるにつれて信じられなくなっていた。


茂「コウキ、そろそろお湯が沸くぞ。車からカップ麺をとってきてくれ。」

光樹「わかった。赤いのと緑のどっちがいい?」

茂「今日は緑のたぬきで頼む。」


夜の暗い雑木林の生える山の中、山小屋のそばから若い男がランタンと車の鍵を手に熊よけ鈴を鳴らしながら、車へ赤いきつねと緑のたぬきを取りに行く。

ここは彼の曽祖父が購入した土地で車が1台通れる程の山道を1kmほど進んだ位置にあり、今は11月中旬とあって寒いのである。

車のトランクを開けて、ランタンの明かりを頼りに箱に入った赤いきつねと緑のたぬきを1つずつと2人分の割りばしを取り出す。


光樹「・・・(赤いきつねと緑のたぬきが合わせて24個、それに割りばしも・・・父さんが毎年同じ時期にここに出かけるのは知ってるけど、いくら何でも多い。)」


青山 光樹17歳 高校生。金曜日の半日の授業が終わると同時に帰宅して、父親である青山 茂42歳と共に山小屋へ来ているのである。

目的の物を外に出してからトランクをしめて鍵をかけ、山小屋の方へ戻る。

茂はそれを確認すると湯を沸かしていたコンロを止め、外のテーブルの上の鍋敷きにやかんを乗せる。光樹も持ってきた箸と赤いきつねと緑のたぬきを乗せてラップをはがし始めた時、2人は地面の揺れを感じた。


茂「っ!!」

光樹「い゛っ!?」


光樹「地震にしちゃなんか変だぞ?」

茂「まさか・・・コウキ、山小屋からライト2つとブランケット3つを持ってきてくれ。俺はポットにお湯を入れてから2人で周りを調べる。」


光樹は茂の戸惑い方とブランケットをなぜ用意するのかと疑問を持ちつつも靴を脱ぎ、山小屋の中へ上がり、戸棚から道具を取り出し、袋に詰め込む。

茂は沸かせたお湯を卓上ポットに移し替えてから光樹と合流する。


光樹「お父さん、お湯なんて沸かし直せばいいじゃないか。」


揺れの原因を調べるなら早い方がいいと少し不満げにする。


茂「あのときと同じならお湯を冷まさない方がいい。戻ってきてから必要になる。」

光樹「あのとき?」


茂は思い当たる節があり、光樹からライトとランタンを受け取り、熊よけ鈴を鳴らして夜の山の中の雑木林を進んでいく。

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