第93話

 不機嫌そうな龍衛の様子を窺いながら手下らは目を見交わした。嫌な役目を押し付け合う様に、互いに顎でしゃくり合う。ひとりが溜息を吐くと、おずおずと龍衛の前に進み出た。

「頭、結構な上がりですよ。そんなにしかめっ面しなっくても」

 まあ、そうだが、と龍衛は顔を撫でた。

「俺が考えてるのは三吉の事だ」

 お前、どう思う?と振られた手下はさあ、と首を傾げる。

「あいつは仲間には入れられねぇ。かと言って放っておけば俺たちの事を売るだろう」

 そんなもんですかね、と手下は顎を擦った。

「つまり、あいつとは関わるべきではなかったって事だ」

 と言う龍衛の目の光を見て手下たちに緊張が走った。

「始末しちまう、て事ですか?」

 と手下。

「あいつはいまどこだ?」

 そう言いながら龍衛は刀を手にして立ち上がった。

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